悪夢再現・・・甲武信岳

 登頂日  03. 7. 19(土)  天 候  雨のち曇り   百名山登頂順  22番目
 標 高   2.475b       登山口  毛木平      同 行 者     単独行
 温 泉    海の口温泉   ホテル洛奥   ca.na.塩化物泉   500

タイム  
- - -
    場所・地点      着     発     着      発
 毛木平   6:15
 ナメ滝    7:50   8:00 - -
 水源    9:20   9:40 - -
 甲武信山頂   10:25  11:00
 三宝山   11:40  11:50
 武信白岩山   12:55  13:00
 十文字小屋   1420  15:00 - -
 毛木平   1650 -
   所要時間 10:35     歩行時間  登り 3:25   下り 5:10

 先生が西沢渓谷からの甲武信は大変だと言うので、あっさり別コースを選択した。とにかく“日帰り”が条件だ。毛木平からの

コースタイムを見ると西沢渓谷より2時間は短縮できそうなので、またまた安直登山コースを選んでしまった。

 川上村の有名な野菜畑の中の道を突き抜けて、林の中を5分も走ると毛木平の駐車場である。よく整備された駐車場で綺麗

な休憩所・トイレが完備されている。こんなところには似つかわしくないが利用者としては素直に喜ぼう。すでに駐車してあるの

は1台だけ。(あとでわかったが十文字小屋の車だった)


 雨が降り続き気は進まないがここまで来た以上、雨具をつけて登りだした。平坦な道を小1時間も歩いていよいよ登りにかかる

ころ、あんなに強かった雨があがってしまった。脱いだり着たりが面倒だったのでそのまま歩いていたが、暑くてかなわないので

脱ぐことにした。しかしこのあと運良く雨具を着ける事はなかった。何度か休憩をとり丁度3時間で千曲川水源に到着した。鬱蒼

として昼なお暗いしらびそ(?)の林の中に水源はあった。

 あの大河、千曲の源にたどり着いたと思うとやはり感動である。手ですくい口に含んでまた感動である。5秒と手を入れておくこ

とができないほど冷たく、含んでは実に甘い。


 腹ごしらえをして再度登りにかかった。そして急登を20分も登ると稜線にとび出た。ガスは切れたり湧いたりの繰り返しで、眼下

には緑の樹海が広がっている。尾根には遅い石楠花がポツ・ポツと花をつけている。休まずさらに30分弱で頂上に出た。ほぼ4

時間を要した。


 数人の先着者と話をすると、みな小屋泊りの人かタクシー利用で毛木平からだという。やっぱり毛木平のほうがラクなようだ。

 水源地で食事をしたばかりだったのでお腹は空いておらず、写真を撮ったりしながら30分ほど休憩をとった。ほとんどの峰は

雲海の上に頭を出しているだけであったが、山宝岩だけはよく見えた。


 山頂の人たちもそれぞれ下山を開始した。同じコースで来た男性も下っていった。私もその男性が消えた下山路を後を追うよう

に下った。200bを一気に下ったものの何かが変だ。まったく見覚えがないのだ。登りに見た石楠花が全くない。それもそのはず、

そこは三宝山への従走路だったのである。つい・・・うっかり・・・先行者が毛木平に直接下るものとばかり思っていたから、確認

もせずに十文字峠への道を下ってしまった。登り返すのも目の前の急登を見るとウンザリしてしまい、平坦路らしきこっちの道を

進むことにした。

 でも結果としてはここで引き返したほうがまだまだ楽だったに違いない。この先私は6時間後にヘロヘロの状態で毛木平にた

どり着くのである。毛木平からも決して楽ではなかったのだ。あの谷川岳でのルート間違いが脳裏をよぎった。


  
【大河千曲の水源】            【最初の一滴】               

 三宝山山頂に着くと先ほどの先行者がいて「あれ! 直接下るんじゃないんですか?」まさか間違えて来てしまったとも言えず

「同じルートじゃつまらないので」
「その方がいいですよ。こっちも森が素晴らしいですよ」とまた先行していった。

 山宝岩に登ると甲武信の頂上が良く見えた。武信白岩山を目指して20分以上急激にくだり30分以上かけて登り返す。シラビソ

の樹林の中ではハエを小さくしたような虫が私にまとわりつき、目を開けていると飛び込み、呼吸をすると吸い込まれる状態が三

宝山から続いていて、立ち止まることも弁当を開くこともできない。それに加えてアップダウンの連
続。はっきり言ってシャリバテ

である。虫を一緒に食べる覚悟で弁当を開くことも考えたが、
やはりその勇気は湧いてこなかった。


 
  【雲が湧き出した】        【埼玉の最高峰、三宝山】

 
先ほどから続く鬱蒼としたしらびその樹林。朽ちて倒れた親木からはそれぞれ世代の違う子孫達が成長を始めている。確実に

世代交代が繰り返されている森であった。倒木を覆う名も知らぬ苔、むせ返るような湿気の中を飛び交う小さな虫。太古から育ま

れた大自然。今まで森の何が素晴らしいのか興味すらなかった。いや、ブナの森の美しさ、水の美味しさ、緑のダムの重要さなど

その場その場で理解しているつもりではいたが、学問的に体系だてて考えることは無かった。道を間違えてこの森に踏み込んだ

お陰でおぼろげながら理解できた気がした。


 
白岩山の岩峰はガスの中で、おそらくは切れ落ちていた稜線も恐怖感は全く無し。大山への登り返しから十文字への下りは

1時間半を要した。十文字小屋の屋根が目に飛び込んで来たときは飛び上がるほど嬉しかった。


 先行者は1時間も前に通ったと言う。「下るだけだ」ほっとした私は小屋でビールを買い大休止をした。しかしそれから2時間も

下る事になるのを私はすっかり忘れていた。


  
  【三宝岩から甲武信を望む】       【一度は泊まってみたい十文字小屋】


        日本百名山に