今、埼玉県のK市立美術館で【広重と北斎の東海道五十三次と浮世絵名品展】が開催されています。田舎の市立美術館としては画期的な企画です。当然この美術館の収蔵品ではありません。あるコレクターのものらしいのですが、広重の五十三次が全部そろっています。
コレクションとしては大変なものです。しかも図録の解説内容を展示作品の脇に掲げているのですが、非常にわかりやすく、また違った視点で作品を説明していました。この解説も楽しめる内容で、浮世絵に対する造詣を深くもしていただけました。
ちょっと難しくなりますが・・・江戸時代の絵は主に二種類だといわれています。一つは狩野派に代表されるような、大名などに依頼されて描く【綺麗な絵】です。しかしこれは人間味が感じられる作品ではありません。
もう一つが浮世絵です。庶民文化や生活を題材にしていますから、往時の風俗などが表現され、極めて人間臭いものになります。
例えば【赤坂 招婦の図】ですが・・・招婦とは娼婦のこと・・・木賃宿の一部屋ではチェックインした旅人が食事をしていて、もう一つの部屋では飯盛り女が化粧に余念がなく、その隣に立っている仲居が、客の依頼があったことを伝えて急かしているようです。
これを広重や私たちが覗き見をしているのです。この後旅人と飯盛り女はどのように関わりあっていくのか・・・想像に難くありません。当然、男と女の関係・・・極めて人間臭い世界が描かれ・・・これが浮世絵なのです。この例も【請け売り】ですけど・・・。
ところで広重や北斎と並んで喜多川歌麿や東洲斎写楽も良く知られています。この東洲斎写楽という人物は実在しない人だと知っていましたか。
僅か1年弱の間に100点以上もの作品を残して、こつ然と消えてしまいました。
昔から【写楽はだれなのか】と学会でも、議論が繰り返されてきたのです。浮世絵は実にミステリアスでもあるのです。逆に言えばそのあたりが面白いのかもしれません。
私の先輩で【高橋克彦】という作家がいます。NHKの大河ドラマ【炎立つ】や【北条時宗】の原作者です。彼が第一回江戸川乱歩賞を取った【歌麿殺人事件】という作品がありますが、この作品名でお分かりの通り彼は浮世絵研究者でもあります。
その彼の推理は今になっては間違っていましたが・・・写楽はだれなのでしょうか?
答えを近いうちにお知らせしたいと思います。余談ですがNHKが組んだ特番も答えは間違っていました。国営放送までが参画するほど、この問題は過熱したのです。
いかにも人間臭くて、しかもミステリアスで・・・狩野派が描く金屏風に描かれる乾燥的な美しい花などとは全く別の絵だということが判ります。
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