山用語で、ある登山口から頂上に立ち、再びその登山口に降りてくることを蒸気機関車のピストンのようですから『ピストン』。またある登山口から登って尾根をずっと歩き、またピークをいくつか超えて下山する事を『縦走』と言います。
今回の私の登山は縦走で・・・扇沢から種池まで登り、さらに尾根を2日間かけて歩いた後に再び扇沢に下山・・・ぐるっと一周するタフなコースでした。これをやれたというのは今年がいかに絶好調かを物語っています。
9月の前半に南アルプスの南の地区を縦走しようと考えていて、今回はその予行演習的な山行でした。実際の本番は3.000㍍峰を5座も登頂する、今回の3倍はハードな山行になりますが少し自信が湧いてきました。天気が4・5日安定する時を狙って一気にやります。
今回登頂した山は登頂順で言えば、名前の着いているものだけで【岩小屋沢岳】【鳴沢岳】【赤沢岳】【スバリ岳】【針ノ木岳】【蓮華岳】。
一日目は扇沢から種池乗越に登り、そこからガスの中の稜線を歩きました。種池までの登りは素晴らしい天候で、左手に翌日登頂する蓮華岳を見ながらの快調な登り。
10時を過ぎてガスが巻くようになっても、稜線の歩きはお花畑を楽しみ、クジャク蝶など高山特有の蝶を写真に撮ったり・・・眺望は無くても存分に楽しめました。
唯一、一日目のピーク・・・岩小屋沢岳頂上は全く視界がありません。本来なら剱岳や立山連峰が見えて素晴らしいロケーションなのです。まあ後半の峰々が目的ですから、それほどの執着もありませんでした。
脚力に不安が無かったら一気に針ノ木まで行くつもりでしたが、この後さらに5時間の余力があるのか?
また、今日ガスの中を延々と歩くより、明日の天気の回復に賭けた方が良いのでは・・・。
新越山荘に着くまで迷っていました。
7時に扇沢を出て、種池到着が10時、そして新越山荘が12時半でしたから・・・この先地図では5時間ほどかかりますが、私の足では4時間ぐらいと思ったのです。ですから次の小屋【針の木】は4時半・・・十分、安全な時間ですが。
新越の小屋の前に数人の男女がいて、その中の一組のご夫婦に『この先に進みますか?』と聞くと『ここに泊まる』と言います。私の心は決まりました。明日、天気が回復した素晴らしい山行に期待したのです。でもこのご夫婦が『先に進む』と言ったら、きっと私も進んだはずです。
この日の泊りは4人…12時半段階ではご夫婦と私だけでした。受付をすると別々の部屋に案内され、とりあえず『個室状態かな』と期待します。
しかしまだ13時ですから登山者はまだまだ移動中で、これから何人増えるか解らないところが不安でした。
前日の睡眠不足で布団に横になってうつらうつらしていましたが、足音が響くたびにこの部屋に登山者が案内されるのでは・・・と気が気ではありません。
結局5時の夕食まで部屋は私一人が占有で、この後も増えることはありませんでした。
夕食の時、4人の泊り客は前からの知り合いのようにいろんな話をしました。実は山小屋に泊まるとこれが楽しいんです。自慢ばかりする人や他人の話を聞くだけの人、いろんな人がいて・・・結局その中から数年経った今でも付き合っている人もいます。
このメンバーは翌日もほぼ一緒の山行になりました。二日目の工程は長くて辛い道のりでしたが、このメンバーのお蔭で楽しい山行になりました。そして新越に泊まって翌日に期待した天候は・・・見事に回復し素晴らしいロケーションの中を歩く事に。
この日私は7時半には眠っていたに違いありません。何より安心して『いびき』がかけますから・・・こんな心強い事はありません。
写真は最大20人が詰め込まれる部屋に・・・私一人の寂しくても嬉しい複雑な写真です。
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