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60. 黒部五郎岳

北ア最後の巨峰・・・黒部五郎岳・三俣蓮華岳

メ モ
登頂日 11/07/14(木)〜16(土)
天 候 晴れ
百名山登頂順 78番目
標 高 2,839㍍・2,841㍍
登山口 新穂高
同行者 単独
温 泉 中崎山荘
奥飛騨の湯 800円

タイム
場所・地点 往路 (着) 往路 (発) 復路 (着) 復路 (発)
新穂高 : 4:25 8:00 :
わさび平小屋
(2日目泊)
5:35 5:45 17:15 7:00
秩父沢横断 6:45 6:55 16:15 16:20
鏡平山荘 9:00 9:20 14:45 14:55
弓折分岐 10:10 10:20 14:00 14:10
双六小屋 11:30 11:50 12:45 13:00
三俣蓮華岳 13:55 14:10 11:20 11:25
黒部五郎小屋
(1日目泊)
15:30 5:10 9:00 9:30
黒部五郎岳 7:00 7:25
歩行時間 一日目
11:05
二日目
13:15

平田影郎

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昨年、鷲羽岳や水晶岳と一緒に登頂するはずであった。ところが途中で持病の膝痛に見舞われ泣く泣く断念していた経緯がある。

残した一座だけで北アの最深部まで歩くのはもったいない気がしていて、山行を一日延長して【雲の平】も行ってみようと考えていた。折立からだと周回コースで実に効率がよく、計画自体に満足していた。

ところが数日前になって富山側の有峰林道が崩落して、小口川線という別のルートしか使えないと判明した。私は走行した事が無く何だか気持ちが重かった。しかも薬師沢と太郎平の間で橋が2本流出しているという。増水しなければ問題ないというものの、十分雲の平を諦める理由になりそうな状況である。今回は岐阜側の新穂高から黒部五郎へのピストンのみとした。雲の平はまた次回の楽しみに取っておこう。五色が原や高天原と一緒にぜひ訪ねてみたい。

前夜のうちに新穂高無料駐車場に車を停めて、21時には横になっていた。しかし相変わらずこんな日はなかなか寝付かれない。寝たような寝ないような時間が延々と過ぎて行った気がする。

朝3時には起きて食事をしスタートする時は4時になっていた。そして登山届を書いている間には4時半に近い。やっと歩き始める頃にはうっすらと明るくなっていた。それでもまだまだ気味が悪い時間帯ではあった。林道の大きく曲がるところで下を確認すると2人の登山者が後ろを歩いている。なんとなく慰められる。林道に入って見上げると笠が岳が朝日に映えていた。

今回の山旅も天候に恵まれそうである。朝早い事でまだ気温はそれほど高くなく、風穴の前では心地よい冷たさがまだ感じられなかった。昨年は風穴前が9時頃で、火照った体は風穴からの冷気に救われた。

素晴らしい山旅を予感させる笠ガ岳の朝焼け

わさび平の小屋近くで小屋の従業員が『熊が出た』と注意を呼び掛けている。しかし何をどう注意をすればいいのやら、皆目見当もつかない。鈴程度なら当然実施済みだ。小屋で休憩していると単独行の男性と会話を交わすようになり、結局この方と今回はずっと行動を共にする事になった。佐野さんという方で山歴は長く知識も豊富で、お陰でずいぶん心強く、また有意義な山行になった。

わさび平から秩父沢はこんなに距離があったかな–と感じる程なかなかたどり着けなかった。前回は何かあっという間だった気がする。そして帰路に下っていて感じた事だが秩父沢までがこんなに登りの連続だとは記憶になかった。鏡平までの小池新道は登っている記憶が全くないのだ。時間としては一つの登山ほどを要するが、プレッシャーとしてはそれほどきついものではなく、予定の時間で鏡平に着いた。

途中の秩父沢は雪渓が昨年よりはるかに小さくなっていた。昨年はこの時期まだ橋がなく、200㍍ほど上流を高巻きしたが今年は7月13日に橋が架けられたという。秩父沢で水を補給し、ついでに腹いっぱい雪解け水を飲んだ。この水の美味しさは別格で、山歩きをしているモノしかありつけない・・・山を歩く人だけの特権でもある。

秩父沢にかけられた橋
秩父沢の橋上流の雪渓は例年より小さい

シシウドケ原から先でキヌガサソウなどの雪解け時期の花を、やっと見ることができた。佐野さんと二人で会話をしながら、花を見てのんびり歩いていると鏡池である。

実はわさび平で佐野さん以外の方とも話をしていたが、その方がここで休んでいた。この方も山歴は長いそうだが、大分足に来てヘバッテいた。鏡平で戻ったのかこれ以降この方と会う事が無かった。鏡池に映る槍ヶ岳を【逆さ槍】で撮ったが、いまいちピークが確実に映っていなかったのが残念。

鏡池に映る逆さ槍 頭が少しだけ
登山道脇に咲く

弓折岳からの稜線は昨年同様にお花畑が真っ盛り・・・あらゆる高山植物と出会うことができた。クロユリ平のクロユリもピークであった。双六小屋に12時前に着けたら黒部五郎小屋まで今日中に進もうと思っていたが、楽勝に時間短縮で到着。佐野さんと相談してさらに先を目指した。この時点でまだ三俣蓮華の山荘に泊まる可能性も視野に入れていた。

双六小屋で『到着が何時でも食事は大丈夫』と確認してあったので、心には余裕があった。

稜線のお花畑
くろゆり平に咲くクロユリ

三俣蓮華からの下りは長く、とても1時間程度の下りでは小屋にたどり着けないと容易に想像できた。黒部五郎に向かう人はまだまだ少なく、尾根のかなり先のほうに数人の背中が見えるだけである。小屋間近の急登を20分ほど下ると、待望の黒部五郎小屋であった。事前の鍛錬のお陰でしっかり歩く事ができ、翌日の工程が大幅緩和された事になる。

黒部五郎小屋は電話が一切通じず、まさに隔絶された世界である。否が応でも下界の全てを忘れこの雰囲気に浸るしかない。受付を済ませた佐野さんと私は、さっそく生ビールで乾杯をした。夕食までは相変わらず山男たちが集まって【山談義】に花が咲いた。

夕食は比較的食べやすく工夫されていて、双六系の小屋はこの点からも安心できる。

前夜もあまり眠れなかったが、この日もまた日付が変わるまで眠る事ができなかった。このままでは明日の登頂に影響が出ると判断し、薬の力を借りて眠る事にした。睡眠時間は少ないもののしっかり眠れたようで、朝起きては頭がすっきりと冴えていた。

やっと到着 黒部五郎小屋

朝食の時佐野さんから『せっかく一緒に歩けて知り合ったのだから、このまま別れるのは辛い。ペースが合わずに別々に行動するかもしれないので今のうちに』と、住所やメルアドを預かった。当然私の拙いホームページのURLもお渡しした。

出発。何を焦っているのかカメラが見つからなくなったりして、みんなからは10分ほどスタートが遅れてしまった。今日も天気は快晴で黒部五郎岳は朝日に映えていた。

少しスピードを上げてカールの中をどんどん高度を上げていく。30分も進んでいると先にスタートした方達の背中をとらえる事ができた。1時間ほどで佐野さんにも追いついた。カールから稜線に上がるつづら折れの道は急登で、唯一ここだけが辛い場所であった。

しかし今日は背中が軽い。小屋に荷物を預けてほとんど空のザックで挑んだのだから、荷物を背負った人のスピードとは比較にならない。

朝焼けの黒部五郎岳
カールから望む黒部五郎岳

佐野さんは相変わらず花を写しながらのゆっくり旅、一方私はせっかち旅。稜線に出ると太郎平からの尾根伝いの道が望め、たおやかな稜線は本当に魅力的であった。やはり黒部五郎は太郎平からにすべきだった。

急登を行く佐野さん
たおやかな太郎平からの稜線

太郎平からの道を併せて5分ほどで山頂に至る。山頂では昨日小屋で遅くまで話した【本田くん・・・仮名】と出会う。今日は薬師岳に登頂した後に雲の平にテン泊するという。少々無理があるかもしれないが一年で百名山を93座登頂した彼なら明るいうちに行きくかもしれない。

山頂では御覧の通り360度の大パノラマ。遠くと言わず近くと言わず・・・ありとあらゆる名峰が同定できた。昨年の北アに続きビッグなご褒美を頂けたと思っている。

三角点と槍ヶ岳 黒部五郎山頂にて
手前から 笠ガ岳・乗鞍岳・御嶽
山頂は360°の大バノラマ

30分ほど山頂で楽しんでしまった。佐野さんに『鏡平まで下山するならもう出発しないと・・・』と促され、やっと腰を上げて下山にかかった。実は時間と脚力が許すなら鏡平よりもっと下って【わさび平】に到達したかったのだ。

マックスを暗くなる19時に置き、それまでの時間を各コースに割り振ると十分新穂高まで帰りつける。しかも万が一の場合でも数時間毎に小屋が設置されていて、全く安心この上ない登山道である。

あわてる必要は全くなく、自分の不注意だけが不安の種である。慎重に・・・慎重に行動する事だけを心掛けて進んだ。

厳しくなるだろう下山に備えて黒部五郎小屋ではしっかり休憩を取り、パッキングと足回りのメンテナンスを十分に行った。その時佐野さんも小屋に戻ってきたが、先に私が出発した後は、再びお会いする事はなかった。

設定したコースタイムを見比べながら歩いていたが、どの区間も少しずつではあるがタイムを短縮していた。できた余裕の時間はすべて休憩時間にあてた。万が一タイムをオーバーして設定時間に到達できなかったら、無理をしないでその小屋に泊まると決めていた。

黒部五郎小屋と三俣蓮華岳の間の尾根からは雲の平の山荘が良く見えた。本来なら今日目指すのはあそこだったはず・・・と思うと少し残念ではあった。

双六小屋でうどんを食べ再びエネルギーを注入した後は、迷うことなくわさび平目指して駆け下った。少し予定外だったのは秩父沢からも1時間ほど下りがあった事だ。あんなに登っていたなんて・・・全く記憶に残っていないのが不思議だ。

帰路に雲の平山荘が目に飛び込んできた
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