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57-2. 剱岳

早月尾根は力不足を許さない・・・剱岳

メ モ
登頂日 06/09/02
天 候 快晴のち下山時雨
百名山登頂順 64番目
標 高 2,999㍍
登山口 馬場島(早月尾根)
同行者 単独
温 泉 神子温泉 竜神の湯
単純泉 500円

タイム
場所・地点 往路 (着) 往路 (発) 復路 (着) 復路 (発)
馬場島 : 5:50 19:40 :
早月小屋 9:55 10:20 16:00 16:20
剱岳山頂 13:45 : : 14:00
所要時間
13:50
歩行時間 登り
7:30
下り
5:20

平田影郎

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 夕べ10時に埼玉を出発した時は“馬場島に3時ごろには到着できるだろう、少しは眠れるだろう”と思っていたが、到着したのは明るくなった5時であった。結局一睡もしないで出発する事になってしまった。6時の出発ではとても日帰りは無理だろうと思っていた。

 登山口で地元の病院で看護士さんをしているNさんに話しかけられた。日帰りですか?・・・出来たら日帰りしたい。話しながら一緒に歩き始めたが私にペースを合わせてくれているようで、何度か靴擦れの治療をする間も待っていてくれた。素振りから私よりは健脚だと容易に判った。

 早月尾根は非常に歩きやすい。というのも、今論争になっている土嚢が丁度歩きやすく設置されている。論争の中味に触れてみるとNさんは良く知っていた。反対派の人は鎌を持ってきて土嚢を破いて歩いているという。それで“破けたらただのゴミだ”とネットで言っていたが ・・・。もちろんありのままの自然が良いに決まっている・・・が、多くの登山者が歩いて・・・雨の後の状態の悪い日も多くの人が歩いて、泥を流失させてしまうに違いない。

それなら麻袋の土嚢で保護する事が悪いとは私にはどうしても思えない。

こう言えば反論があるだろうが、私は私の感性・経験・知識でそう思えたのだから仕方が無い。むしろ自費で材料を用意し手弁当で通い続ける方に頭が下がる。千葉の方だという。

 もう少しで小屋という地点で私はきつくなり始めNさんには先に行って頂いた。Nさんのペースではオーバーペースだったかもしれない。何より1.200㍍地点で靴擦れが出始め、そして夕べは一睡もしておらず、更に食事も喉を通ってくれない。足の筋肉にエネルギーがないのだ。

 小屋に到着すると同時にNさんは出発して行った。小屋番の佐伯さんに『ストックを置いていけ』とアドバイスされ、更にサブザックに余分なものを入れて預けた。『今日は小屋が満杯だから早く帰って来い』と送られ、靴擦れの治療をして頂上を目指した。

【登山口、綺麗なトイレ】
【一応写真に残す】
【早月小屋が見えた】

 ここからがやはり厳しかった。小屋までのオーバーペースが響いているし、小屋で大きく休みを入れたのも失敗でほとんど亀足になってしまった。それでも10時30分出発の私がラストのようで追い越していく人はいない。“14時までに行ける所まで”を目安にしているので気は楽だ。

  ダメだったら小屋に戻り明朝再挑戦しようと決めていた。2.600㍍でやっと空腹感を覚えおにぎりとパンを無理に押し込んだ。

食事中、下山の紳士が声をかけてきた。『貴方がラストサミッターのようだ、気をつけて』やっぱりこの時間にこの位置では遅すぎて心配のようだ。後で判った事だがこの方は剱沢小屋の小屋番をしていた越さんで、明日は越さんを師と慕う人達の会の山行らしい。それで小屋が込む理由が理解できた。となるとやっぱり・・・どうしても下山したい。私の前を行くのはNさんらしいが、30分以上は差があるだろう。

【早月小屋が小さくなっていく】
【ピース好きの相棒】
【あと1時間で着ける?】

 靴擦れで、寝不足で、シャリバテでヘロヘロながら何とか13時に2.800㍍に到達できた。ここまで来ると目安にした14時だからと言って引き返す訳には行かない。でもあの山頂まで1時間で行ける体力があるとはとても思えないし気力もない。小屋に泊まる事を想定すれば14時を廻ってもかまわないと、ハードルを低くした。ここからは少し危ない所があるものの登りが厳しい訳ではなく、つまずいたりよじけないようにだけ注意していれば問題はない。鎖場も圧倒的に剱沢の方が厳しく、早月尾根に怖いと感じるところは一箇所もない。

  1時間では無理と思った2.800㍍から45分を要して、13時45分に山頂に立った。Nさんはソーメンを食べていた。二人はお互いに白馬や鹿島槍や別山などをバックに写真を撮りあった。頂いたミカンは本当に生き返るほど美味しかった。こういう風に工夫すればエネルギーを取る事が出来るのだ。食べ物が喉を通るのだ。努力が足りなかったなー。

【1時間ではムリでしょう】
【剣沢方向を望む】
【ヘロヘロの山頂、三角点は忘れた】

 Nさんに「小屋の混雑を考えると今日中に下山したい」と言うと「一緒に下山しよう、一人では寂しいから」と言う。“上りと違って下山だから大丈夫だろう”という甘い考えがあった。小屋まで2時間で戻る事が出来たが、私には相当のダメージが蓄積されていたようだ。

Nさんが小屋で越さんと話したりビールを飲んだりする間、私は小屋番の佐伯さんにお詫びをし預けておいた荷物を受け取った。佐伯さんはこの時間から下山する私に色々親切にアドバイス・注意をしてくれた。本来小屋というものは緊急避難の要素を持っているのに、あえて名前は言わないが前回の小屋のように使命を忘れてしまっている。佐伯さんは本来の使命に忠実にしているだけなのだろうが、なぜか温かいものを感じてしまった。

 Nさん一人なら19時前の明るいうちに下山できていたはずなのに、私が足を引っ張り馬場島には20時近くなっていた。

17時頃から落ちだした雨は雨具をつけるほどではなく、逆に知らず知らず身体は完全に濡れてしまった。フラつく足、一歩一歩慎重に置かないと不安な足元。そんな中で力の無いヒザは例の土嚢には大分助けられていたはずだ。

 最後の下りを前にして息を抜ける平坦路も再び私に気力を呼び起こしてくれた。しかし馬場島のキャンプ場の灯りが見えた時には、この後の風呂の事を考える余裕が出来ていた。どうしても風呂に入りたいというと遅くまでやっている神子温泉を案内してくれた。風呂に入る時に確認すると靴擦れは5箇所、しかも皮が剥がれ肉が赤く剥きだしになっていた。

 お世話になった御礼と足を引っ張ったお詫びを申し上げてNさんとは別れた。今度山行をともにするまでには確り鍛えなくては・・・。

 前日も寝ておらずこのまま車の運転は危険だ。入善PAに車を入れコンビニで買い込んだビールとおでん、そしてソーメンを胃の中にいれた私は泥のように眠った。

 ◇△◇○井スポーツオリジナルの靴、形状が右と左で違っていると部下が気づいてくれた。縫い目も5ミリほど盛り上がっていたり、踵は内側に反っている。誰が履いても靴擦れは当然と判明した。今までも2回も交渉していたが『紐の締め方が悪い』などと取り合ってくれなかった。中国で作ったいい加減なものに違いないが、登山で靴の機能は生命に直結する。

確認は責任を持ってやってもらいたい。

早速◇△◇に交渉すると店長が30秒ほど履いてみていたが『全然問題ないですよ』という。言ってやりました『サイズが合っているのに30秒で靴擦れする靴を売っていたら、お宅はとっくに潰れている。1時間履いてみろ』 渋々交換に応じたが5万円の靴は2万円のバーゲン品になってしまった。もう大事な物は◇△◇で買わない事にした。

早月尾根の花

【トリカブト】
【ミソガワソウ】
【タテヤマリンドウ】
【ミヤマシオガマ?】
【アザミ】
【キイチゴ】
【カライトソウ】
【ヒゴダイ?】
【ウサギギク】
【アケボノソウ】
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