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甦る【えぶり差岳】

源流釣り

二王子岳(新潟県新発田市)に登り終えた友が、朳差岳(えぶりさしだけ)に登るために移動したようだ。多分大石ダムから登るのだろうが、その登山道は大石川西俣沿いに続いている。

大熊小屋を経て目的の朳差岳まで7~8時間は覚悟しなければならない。もっとも私は沢を遡っているので、登山道での所要時間は知らない。

この大石川西俣で・・・わが【やどろく遡行隊】は痛恨のミスを犯した。その記憶は今でも鮮明に残っていて、やどろくの会がその後山河で事故を起こすことが無かったのは、この事を教訓として山遊びをしてきたからに他ならない。

云わば我々やどろくメンバーのバイブルでもある。古い機関誌を開いてみると、その時の事故が報告されている。いささか小説じみてはいるが、紛れもない事実だけが綴られている。
題は我々は沢遊びのグループですから、川の報告らしく【飯豊連峰 大石川西俣】となっています。

構成は
1章 朳差への登山道は平坦
2章 大熊小屋遥か
3章 挑戦
4章 九死に一生
5章 撤退
エピローグ  

気が向いたらお付き合いください。今日は一回目です。

《杁差への登山道は平坦》

ダムサイトの駐車場に止まっているパジェロから降りた3人は、ザックを背負って歩き始めた。今午前5時、夕べ8時に本庄を出発してから一睡もしていないのに、3人とも快調な足どりである。

これから6~7時間は歩きづめに歩いて、昼ごろまでには大熊小屋にたどり着きたい。ダム左岸の道は滝倉沢まで舗装されていて、とても西俣の厳しさなど連想できない。

橋の手前に登山記録のノートが置いてあるので、中を見ると3日前に釣り師1人入山。‥‥が、既に昨日下山している。

『チャンス』『ラッキー』 3人は大はしゃぎ。橋を渡り終えると、そこからは本格的な登山道となり、西俣川ぞいに大熊小屋を経て、杁差(えぶりさし)岳へと続いている。

道はだらだらの上り下りを繰り返しながらも比較的平坦である。黒手沢あたりから、はるか、下方にゴルジュを望むことができる。   

『こんなとこ、本当に川に降りられるんですか?』と素人。『大丈夫、小屋まで行けば道と川が一緒になるから。』と私。

こんな会話をしながら進んでいると、先頭を歩いている私の後方から突然『ギャーッ』。振り返ると素人が『 へ び ! 課長、今、へび踏むとこだったよ。』と言う。

鉄人がすぐ草むらを足で払って確認すると「黒マムシ」だという。見ていない私はちっとも怖くない。絶対足もとは見ないようにしている。ゴルジュの中で1時間も歩くとザックの重さも気になりだし、少し休むことにする。 

とタイミングがいいことに、水掛沢付近で一か所だけ道と川とが近くなっているところを発見。わずか20メートルも降りると竿が出せる。もう我慢できない。ちょっと様子が見たい。「休憩のつもりで釣るか。」 よせばいいのに・・・・・。

三人がそれぞれ別れて釣りだすと、これが釣れる、釣れる。あっと言う間に7・8寸が5匹もでた。今、自分が渡床した場所を流してもすぐ飛びついてくる。鉄人に「でたかい?」と声をかけると「ええ、7・8寸が六つほど」。さすが西俣、来たかいがあった。

このまま釣り上がる事にするが、やはりポイントごとに良型がでてくる。大物はでないがおもしろいように釣れる。もう三人は夢中になって釣っている。しかし時間はどんどん経過していく。

ほんの休息のつもりだったのにゴルジュの中を大分進んでしまった。時間のロスを考えるともう引き返すことはできない。「上流のロボット小屋付近で、また林道に戻ればいいや。」 

途中3メートルの滝がある。滝の直登も考えられた。が両岸から岩がせりだし川幅が狭められて水勢がつよく、結局高まくことにした。

トップで鉄人がクリアしザイルをおろす。続いて素人が登る。二人が登ったところでザックのぴストン。

最後に私が登って行って何とビックリ。岩壁はもっと上までそそり立ち、先に登った二人は途中の木に掴まっているだけだった。素人なんか恐ろしいことに木に掴まった状態でザックを三つも抱えているではないか。ザックを置く場所もないような、垂直な岩壁の途中に生えた木に掴まっての高まきとなってしまった。

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