ヘロヘロでやっと到着・・・妙高山
平田影郎
ほぼ2ヶ月ぶりの山行、夏場の一番いい時期に山から離れてしまった。この2ヶ月間で鹿島槍や朝日が済んでいるはずであった。この歳になると筋肉の衰えはあっという間で、さすがに難易度を落としての選択・・・と思っていたのだが・・・落としたつもりの難易度はちっとも落ちては居なかった。鍛錬不足と睡眠不足が簡単に登頂させてはくれない。
燕温泉から温泉街を進み【黄金の湯】を覗くと何人かが浸かっている。帰りに浸かるのが楽しみだ。スキー場の登りは荒島岳を髣髴させるが厳しさは雲泥の差だ。斜面を登りきると谷筋の平坦な道が小1時間、赤倉温泉【源湯】の碑までは全く問題はなかった。前方には2段の見事な滝、光明滝と称明滝を望むことが出来る。その上方には妙高のピークが覗いていた。
北地獄谷から渡渉点を過ぎた燕登山道は、急に全く容赦の無い登りとなる。胸突き八丁の登りで私はあっさりダウンを奪われてしまった。「今日はもう駄目だ。やめて帰ろう」と真剣に考えてしまった。後ろから来た登山者がどんどん私を追い抜いていった。
「天狗堂に着いたら止めるか続けるか考えよう」「それにしても天狗堂はまだなのだろうか」と思った矢先にやっと【天狗堂はすぐそこ】の看板が現れた。とりあえず救われたようだ。この看板があと50メートル先にあったらやめていたかもしれない。
コースタイムから15分遅れで到着すると、一緒に出発した皆さんが休んでいた。実際には渡渉点からの遅れが15分である。この先が思いやられる。大丈夫だろうか。折角だから行ける所までは行こうと決めた。ゆっくりだが確実に高度を上げる。
【風穴】を過ぎたあたりで気がつくと、だんだんペースが取り戻せるようになっていた。胸突き八丁で機関銃のように撃ち続けていた胸の鼓動も、全く平常に戻っている。こうなればしめたものだ。何時もどおり花の写真を撮ったりロケーションが目に入る余裕が出来てきた。
結局寝不足と起きぬけにスタートして、食べ物をお腹に入れていなかったのが原因だったのだろう。上り始めて4時間半、ヘロヘロになりながらやっと到着することができた。
多くの人が思い思いに寛ぐ北峰(?)に移動する。バテバテでまともに動く事も出来ず、昼食をとりながらゆっくり休むことにした。30分も休むと疲れも大分癒され、どうにか歩けそうに感じたので下りにかかった。靴擦れや早くも訪れた筋肉痛に襲われ、我慢の下山である。足の裏が火を噴くような熱さだ。スキー場の下りは短いスパンで助かった。これが荒島岳ほどの長さがあったらきっと泣き出していただろう。
この歳になると何も鍛錬しない2ヶ月は本当に影響が大きい。ただただ辛かった山行。まったくなさけない。
数十年ぶりにレモンのカキ氷を食べた事があえて報告事項。ついでに食べた山菜蕎麦は箸でつまむ事が出来ないほど茹ですぎのクチャクチャで、500円も支払うのがバカらしいほど。素人が作ってもこれよりは美味しい。最大の抗議として大部分をどんぶりに食べ残してやった。少しは感じただろう。店の名前は公表せずにおくが、他の店の名誉と犠牲者を少なくするためにあえて言っておく。・・・・・燕温泉街一番奥の左側のお店・・・・・。