群馬-4. 鼻曲山
ハナビラタケをゲット
平田影郎
シーズン初めての山行は、何時も歩行時間の短い山を選択している。今シーズンはここまで一座も登頂していない。ここから徐々にプレッシャーを高めていき、夏本番までにはしっかりとした脚力ができるように山行を重ねていくのだ。
今年は北アの最深部を予定していて・・・半月程でその脚力を作り出さなければならない。結構忙しい・・・お尻に火が付いた。
浅間隠山の登山口と一緒の二度上峠、何度も来ていたはずだったが最後に来たのが10年前。記憶はすっかり飛んでいて『こんなに遠かったかなーー?』 何度も自信を喪失して停まってしまった。畑に出ていた農家の方に聞いてやっと到着した。
この山を選んだのは【レンゲショウマ】を見たかったから。確か・・・・この時季だったはずだが、結果としては少し早かったようだ。
二度上峠の最高点に数台停める事が出来る空き地があり、1台だけ車が停まっていた。ポツポツと雨が落ちていたが、ブナやミズナラの林が笠代わりになって・・・小雨程度なら濡れることはない。
雨を避けてくれる代わりに、昼なお暗い樹林の中を進む。目は花を追いかけているが、希望のレンゲショウマらしきものは見当たらない。その代り・・・あるものが飛び込んできた。何と・・・どう見ても・・・上から見ても下から見ても・・・ハナビラタケ。
それが堂々と登山道に。誰も採らないでここまで大きくしてくれた。たしかに知識のない人は、キノコは恐いものに映る。
ずいぶん迷ったが、重いので帰路に収穫することにして先に進む。でも・・・この後不安で不安で、落ち着いて歩いていられない。
誰かに採られてしまうのではないか。先に採った方が良かったのか? 戻って採ってこようか?
いいや・・・ここまでに採られずに残っていたのだから大丈夫だろう! 自分との葛藤を繰り返しながら山頂へ。
山頂の少し手前の展望所からは浅間山が良く見えた。逆に山頂は木々が視野を遮って眺望はあまりよくない。おまけに今日は小雨がパラつく天候で、眺望ばかりかここまでも重い。何よりハナビラタケを採らなかったことが、心をより重くしている。
山頂でおにぎりを食べていても心はハナビラタケが占めている。そそくさと先ほどの場所に戻ると・・・無事に残っていた。思わず舞ってしまうマイタケほどではないが、それでもハナビラタケはやはり価値がある。家に持って帰ってゴミを取り、油で炒めたり、甘辛く煮付けたり・・・。コリコリとした食感は美味しかったなーー。妻にも勧めたがとうとう一箸も付ける事は無かった。
今年はハナから縁起が良いや。レンゲショウマに出会えなかったけど、満足の山行。