種類も株数もさすがに花の百名山・・・【苗場山】
平田影郎
祓川コース登山口までは細い林道を数キロ走る。本格的に山を始める前は、釣りに入るためにこの林道を良く利用した。
カッサ川の源流域に入るのと登山口はほぼ一緒で、途中のゲートで別れると1キロほどで登山口になる。
林道を走るのが分かっていて、キャンピングカーを持って来たくは無かった。そのため朝4時前に起きて6時ごろ到着するように調整。
ほぼ想定の時間だったが駐車場はほぼいっぱいになっていた。しかしこの駐車場は心配いらない。
スキー場のゲレンデ部分を駐車場として開放していて、ものすごい収容能力がある。まだまだ数千台が停められる。
和田小屋までも車で上がれるが、和田小屋まで車を持ち込めるのは宿泊者だけという暗黙のルールがある。
個人的には歩きたくて山に来ているのだから、ルールを破ってまで車で上がるはずもない。
前回も下から歩いたらゲレンデの一部にヤナギランが群生していて、歩いてお陰で見る事が出来たのは得をした気分になったものだ。
山はルールを守る人が多く、ほとんどの人がここから歩いて登っている。
登山道ではなく作業用の舗装された道を登った。
30分弱登ると和田小屋があり、ゲレンデを横断していよいよ登山道に入って行く。コースの至る所が木道になっていて歩きやすい。しかし一部は大石ゴロゴロの歩きにくい道でもある。
丁度、ホロホロから電話が入り『今、どこにいるの』『今日は苗場山』。
途中電波が通じたが、妻に苗場山に決めたと知らせたいのに・・・出てくれない。
道にクワガタが落ちていて・・・写真を撮る。
十数年前の登山でほとんど記憶は無くなっていて、コースの状態は全く把握していない。下の芝まで以外に長くてまだなのか・・・まだなのか・・・と少し焦りも出る。
木道脇には夏の花キンコウカが満開である。そして時折イワイチョウ。
下の芝に到着し少し休憩して朝食用のパンをかじる。最近は朝でも少しは食事が摂れるようになった。
ほとんど餡マーガリンのコッペパンである。これだと食べやすいうえに、あまり胸焼けもしない。
樹林の中を15分~20分も進むと再び開けて・・・そこは中の芝である。眺望もあって一番気持ちよいベンチだ。
木道脇には少し盛りを過ぎたニッコウキスゲの群生。もう少し早ければ良かっただろうなあ!
上の芝は中の芝に比べて眺望は限定される。大きく休憩するなら中の芝だろう。さらに十数分進むと小松原からの道を併せて神楽峰へと向かう。
ほんのお遊び程度の岩場があるが、それでもお年寄りなどはここで詰まっている。かくいう私もお年寄りの端くれだが、まだまだここで詰まってしまうほどではない。
帰路の事、ここで躊躇していたお年寄り。この岩を言い訳にしているが、年齢に応じて致し方の無い事で・・・自分の行く道。6・7人の時間がかかるお年寄りを、じっと暖かく見守る。
リーダーは屁理屈で可愛げのないジジイだったので・・・内心は・・・譲ることを憶えろ! くそじじい。
奥さんらしい人が『先に通してあげて』って言ってるのに、『良いんだよ!』
黙って待たされるより、余計に腹立たしい。私は愛される・・・可愛い・・・年寄りになろう。
カッサダムのダム湖が見える。ダム下まで釣り登った事も5回ほどは有るだろう。
幾つもの滝をへつって・・・間違えると滝つぼに落下する結構シビアーな渓谷だった。そして帰りはダム作業用の林道で戻ってくるコース。
釣りの要素、滝登り・沢登りの要素を持った面白い渓谷で鮮明に記憶している。
神楽峰の山頂から苗場山が姿を現す。この山の山頂は縦走コースから10㍍ほどずれているが、頂上に移動すると、前回も今回もトイレとして使用されていて・・・困ったものだ。
学校登山で子供たちも登頂する山。そんな山で・・・子供達にはグロテスクすぎる。
いつも思うけど・・・若い娘さんがお尻を出してするわけは無く、絶対年寄り、いい大人の仕業・・・だろう
体調がおかしいのは仕方がないが、せめて穴を掘って隠すなどの努力をしてほしい。むろんトイレシートを持参するのが一番望ましいけど。
ここから。少し進むと『雷清水』があり、汚染されては折角の美味しい水が台無しだ。
雷清水から標高差で50㍍も下ると、苗場山との鞍部になる。ここからがお花畑。
時期的には夏の花。シモツケ・タカネナデシコ・ウツボグサ・ハクサンシャジン・・・それはそれは見事なお花畑が展開する。是非、一見の価値あり。
鞍部を過ぎて、最後の登りにかかって30分。低木帯からポンと飛び出したら、苗場山頂の台地である。
山頂はたおやかな草原・湿原で池塘が点在する。荒々しいアルプスと違って、女性的な表情をしている。
ワタスゲが風に揺れ、池塘の湖面は澄み切った青い空を映している。
実に涼やかで、風が頬を撫でて過ぎていく。
私は趣向としては、岩峰よりこんな表情の山が好きだ。花があって水があって木が合って・・・。
この山も15年~16年ぶりの登頂になる。何度も計画には上がった。しかし目的達成のためには、次から次ともっと優先的に登らなければならない山が出てくる。
一旦、百名山を完登して、区切りがついたことで再び挑めた。
前回も山頂台地を周回したとは記憶にあるが、何があったかはまるで記憶にない。
今回も木道を周回してみた。おそらく三度目がない山だろうから、確り記憶した。
ヒュッテの入り口看板に『ヒュッテにはクマはいません。クマ除けの鈴は外してください。小屋の親父に吠えられます』って。ユーモアあるジジイが管理してそうですが、会ってはいません。
ちょっと愛すべき・・・ジジイかも知れません。
帰路では中の芝で少し休憩しただけで、ほとんど一気の下山。と言ってもフラフラで足取りはおぼつかず。
本当に暑い日で、熱中症とは紙一重。和田小屋でジュースを買って2本立て続けに飲んでしまいました。