木下小屋でヒグマが暴れる・・・羅臼岳
- 17日サロベツ原生花園を見学、フェリーで利尻に渡り北麓野営場テント泊
静岡からの原田氏と友達になり、この後行動を共にする事になる - 18日利尻岳登頂 北麓野営場連続テント泊
- 19日朝のフェリーで礼文島移動、フェリーターミナルで【ミニうに丼】に舌鼓、礼文岳登頂
居酒屋を捜し歩いている男二人が島中の噂に。地の肴で大宴会。久種湖野営場テント泊 - 20日スコトン岬から岬巡り。夕方のフェリーで稚内移動。森林公園野営場泊
- 21日宗谷岬・ベニヤ原生花園を見学 層雲峡に移動し層雲峡野営場泊
- 22日大雪山黒岳登頂 お花畑の中を岩室まで往復。
原田氏と分れ知床に向かう。途中女満別の道の駅泊 - 23日網走市内・小清水原生花園見学、知床自然センターで熊スプレー借用。
道の駅ウトロ泊 - 24日岩尾別温泉から羅臼岳登頂、下山すると木下小屋はヒグマ出没で大騒ぎ。
斜里岳登山口の清里町に移動。道の駅パパスランドさっつる泊 - 25日清岳荘から斜里岳登頂。雄阿寒登山口の雌阿寒温泉駐車場泊
気力が減退し雄阿寒岳とアポイ岳を放棄して帰ることに決定 - 26日新日本海フェリーで帰路に着く。
平田影郎
いつもご覧いただきありがとうございます。
大雪山でH氏と分れたあと、北見・美幌・女満別・網走・斜里と多くの街を見学したり、道の駅を調べたり。
ほぼ二日間かけてウトロにやってきた。
知床自然センターでヒグマ対策スプレーを借りる。デポジット料金2.000円をプラスして1本3.000円で借り、使用しないで返すことができれば2.000円は戻ってくる。実質1.000円の負担で大きな安心を買うことができる。
このスプレーのお陰で不安だった羅臼岳を克服できたのは大きい。
とにかく昨年トムラウシで実際にヒグマに出くわしているから、私にとってヒグマとの遭遇は絵空事ではない。
少し早かったが道の駅ウトロに戻って、まったりしながら英気を養う。比較的空いていて1台おきにスペースは空いていた。
2時半にアラームをセットして、夜8時にはベットに横になった。
ふと目が覚めると2時15分、あと僅かなので起きることにした。トイレに行くとほとんどの人が寝ている時間に歯を磨いている人がいて
『ずいぶん早い出発ですね。登山ですが?』
『いいえ、これから寝るんです』
『?』 2時だと思っている私は、ずいぶん遅い到着だなと思ったものだ。
岩尾別温泉を目指して出発。知床自然センターまでは昨日(まだ当日)下見が済んでいて、そこから左折して知床五湖方面に進む。
ライトに照らされた前方はキツネたちが沢山遊んでいた。歩道に寝転ぶもの、数匹でじゃれ合うものたち・・・数キロの間に数十匹がいた。雄のエゾシカも一匹。夜ならではの出会いだった。
岩尾別温泉に到着すると、隅に一台分だけスペースが空いていてラッキー。温泉の駐車場は使ってはいけないと知っていたので、早く出てきて正解と思っていた。
もう3時ごろかな・・・と思って時計を見るとなんとまだ23時前。時計を見間違えてしまったようだ。
結果としては最後のスペースを確保できたので【怪我の功名】だったわけだ。再びベットに入って眠る。
帰りに知るが、ホテルまでの間の林道は路地用駐車であふれてい、観光バスが走行できないほどだった。
トイレに行きたいのを我慢していたが、登山者が動き出したので私も支度を開始する。やっと安心してトイレに行ける。
北海道はバイオトイレが多い。ここのも黒岳の石室と同じく、ペダルを漕ぐバイオトイレだ。
ホテル宿泊者の中からも出発する人がいて、かなり先行者がいることを確認してから私も登山開始だ。
私の隣の札幌の方、翌日も斜里を一緒に登る事になる。またオホーツク展望台で追いついた二人組は、利尻岳北麓野営場で一緒にテントを張った姫路の方。
この二人は翌日斜里でも一緒になる。みんな同じようなコースをたどる。
小屋から出発する人もいた。ヒグマが出そうな暗い登山道でも、これだけ多くの登山者がいるなら心強い。何よりあのスプレーを持ったことで勇気が百倍に。
何組かのパーティを追い越しながら、追いつくと背中で歩行ペースを計る。私と同程度の早さなら後ろから着いて行きたい。がっ、極端に遅ければ仕方なく追い越すことになる。
650㍍岩峰・・・と言う場所には【ここからはどこにでもヒグマがいる】という看板。気持ちは良くないが、だからと言って登山をやめるわけにもいかない。
私だけが運が悪い・・・とは絶対考えず、確率を信じて進む。昨年出会っているので、今年出会うことは無い・・・と。
羅臼岳の登りとしては、それほど厳しいものではない。ヒグマの恐怖が圧倒的に苦しめる。だからポイントポイントでみんな一緒に休憩をする。
特に弥三吉清水と銀冷水は多くのパーティと休憩する事が出来た。
そして様子を見ながら・・・何組かが先行してから進むように心がけるが、結局私は追いついてしまう。
銀冷水は地表に出てから直ぐ汲むことができるため、飲んでも大丈夫と言われているそうだ。一応口にしてみるときりっと冷たくて、飲んだら美味しいだろう。そうは思ったがやっぱりエキノコックスが怖くて飲むことはできなかった。
2㍑も持っているのにわざわざ飲まなくても・・・。
銀冷水から大沢入り口は直ぐだ。雪渓は思ったより小さくなっていた。アイゼンを忘れて来たので心配していたが、全く支障は無かった。キックステップで十分蹴り込めるほど、腐りかけの状態だった。
雪渓を超えるとお花畑が展開する。今盛りはエゾツツジやエゾコザクラ。雪渓から羅臼平も直ぐだ。
羅臼平には【弥三吉君】と言うレリーフが設置されている。またフードロッカーも設置されている。私は頂上で食事をしようと考えていたので、ザックで背負ったまま頂上を目指した。
ここで下山者が一人いて、結局私が最初では無かった。この後も山頂近くで下山者が二人いて、私は結局4番目。露払いがこんなにいたなら、ヒグマの心配は杞憂に過ぎたかもしれない。
この羅臼平であった最初の下山者は、翌日の斜里岳でも私の前を先行してくれた。私は沢を抜けるまで彼の背中を見ながら進むことができた。
どうしてこんな早く・・・と聞くと『硫黄岳まで縦走する』という。翌日ヒグマはいなかったかと聞くと『一匹も見なかった』とっ。
それにしても人間も一人もいなかったろうに・・・怖くないとは信じられない。硫黄岳への縦走なんて私には到底無理だ。
羅臼平からは小一時間で山頂だ。この時点で山頂からの眺望は抜群だった・・・と思えた。がっ、私が岩清水を過ぎて最後の岩場に取りつくころから雲行きが怪しくなってきた。
そして予想通り私が山頂に到着すると、98座目も山頂はいつも通りガスの中。国後を望むつもりが周りの山さえ見えない。食事をしながら30分も待ってみた。しかし、改善の様子は見られない。
おばさん二人が下山するのを機に、私も下山開始。露払いにしたはずのこのおばさんたち、登りと違って早い早い。追いつくのに苦労しながらの下山だった。
そして予想通り羅臼平から山頂を望むと、くっきりと見えていた。翌日私達より遅く登頂した人に話を聞くと、国後も見えたとの事。
帰路で雪渓であった若者。『オホーツク展望台のところでクマがいた』という。なおさらオバサンを露払いにしたいが、とにかく快速オバサン。
露払いと間を開けたくなくて追いつこうと必死になりすぎ、無理がたたって膝を痛めてしまった。
木下小屋に着いてみると『今、クマが出て大騒ぎだった』と。私が一人の時で無かったら・・・見てみたい・・・雰囲気ではある。
ホテル地の涯の内風呂に入って汗を流す。800円。本当は無料の風呂に入るつもりだったが、クマ騒ぎがあってとりあえず内風呂へ。
でもお風呂バスターとしてはやっぱり無料露天も体験しないと・・・と思い直して入浴。
知床自然センターにスプレーを返却して2.000円を受け取る。そして斜里岳登山口の清里町を目指した。