当然ですが・・・登山とは登頂に成功しただけでは完遂ではありません。安全に下山してこそ【登頂成功】だと思うのです。彼のマロリーもエベレスト山頂には立ったようですか、後年まで認められませんでした。よしんば認められたとしても・・・死んで花見は咲くものか・・・と昔から言います。
私が挑むのはマロリーが挑んだほどの山ではありませんが、キレットで200㍍滑落してもその辺の裏山で20㍍滑落して死んでも、死は死なのです。20㍍の谷しかないから安全とは決して言えません。どんな山でも危険と隣り合わせだと肝に銘じて注意が必要です。
今回もルートは比較的安全ですが、谷は深く切れ落ちていますし誰かが岩を誤って落とすかもしれません。雷が鳴りだし直撃されるかもしれません。そして慌てて下山すると転倒して骨折するかもしれません。色んなアクシデントと闘いながら、登山は楽しむのです。
下山に際してはコース所要時間をしっかり頭に刻みました。そして遅れ始めたら決して慌てず急がずと心に決めてスタートしたのです。
新しい靴はラッキーなことに足に馴染んでくれています。この痛みを心配しない登山がこんなにも心に余裕が持てるという事を初めて知りました。
それでも慎重に・・・ちょっと当たる場所ができたら絆創膏を貼り、紐をこまめに締め直し慎重にも慎重を重ねました。時には締め直して2・3歩歩いただけでも、面倒くさがらず直しました。
『あの小屋まで○時に到着していたら、〇分休憩して先に進もう』『○時を過ぎていたら泊りを選択しよう』
それはもう・・・普段の私からは考えられない慎重さでした。
双六小屋では13時が目安でしたが12時45分に到着・・・うどんを頼んで昼食です。何か化学調味料たっぷりのうどんでしたが、エネルギーと考えれば何とか食べられないことはありません。
私は行動を始めるとあまり食事がのどを通らないため、いつも【シャリバテ】でヘトヘトになって帰り着くのです。
その代り水はふんだんに摂りました。1時間にポカリ500cc一本のペースです。
鏡平山荘は15時がリミットでしたが、14時50分程でした。それぞれのコースで時間を短縮していますが、決して急いではいません。本当に慎重な行動の結果なのです。
秩父沢に予定時間以内に到着したとき、今回の山行の完遂を確信しました。あとはわさび平まで平たん路を歩くだけと思っていたからです。ところが秩父沢からも結構厳しい下りが1時間続きました。登るときは全く辛くなかったのでしょう・・・記憶に全く残っていませんでした。
もともと私は登りが好きなんです。苦しいほど達成感が持てますし、何より高所恐怖症の私でも怖くありません。ところが下りは下が見えますものね。
わさび平に着いた時は流石に足が少しワナワナと震えました。一気に張りつめていたモノから解放された瞬間でした。
17時でしたからこのまま新穂高まで歩いても明るい時間に到着はできました。でも昨年来の懸案で、どうしてもこの小屋に泊まってみたかったのです。期待に違わぬいい小屋でした。
18時以降も多くの人がチェック・インしてきます。もちろん翌朝早くから行動できるように皆さん泊まるのですから・・・そうでないと新穂高から1時間の小屋にあまり意味がありません。
翌朝はゆっくり起きてのんびり新穂高登山口を目指しました。途中でありったけのペットボトルに湧き水を汲み、妻へのお土産にしました。ここを通るときはいつもこれがお土産なんです。そしてこの水で入れるコーヒーは格別ですから・・・今回も二人でコーヒーを楽しんだのです。
写真は富山県側の登山基地、太郎平とそこから黒部五郎に続く尾根道です。右端の黒い山のところに太郎平小屋が見えています。
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