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トップ引き

百名山・北海道

雌阿寒温泉登山口には数十台が停められる公共の駐車場があり、前夜からここに泊る登山者も結構いました。一組は大型のワンボックスに8人ほどが乗ってやってきました。

どうやって寝るのかなーと思っていたら、駐車場にテントを張り始めました。それは・・・普通は反則でしょう。たまたま空いているから文句も出ませんけど・・・。

ご飯を炊いて・・・景福の風呂に入って・・・翌日の準備は完全に整いました。ご夫婦がいましたが・・・翌朝は4時に登山開始するそうです。私もこの日の夕方にホロホロと待ち合わせていて、早い時間に登山をしたいのですがご夫婦より5分だけ遅くて良いんです。

さて翌朝の事です。3時半ごろにご夫婦が起きだして、何やらゴソゴソやってました。私はその様子を見ながらゆっくり準備。彼らより出発が遅くなっていいんです。いいや・・・遅くしたい。

ところが4時になっても・・・10分過ぎても・・・彼らは準備が整っているのに出発しないんです。約束があって・・・エンドが決まっている私は、ちょっと焦り始めました。

全く・・・何をやっているんだか・・・早く出発すればいいのに。私はキャンピングカーの中でこっちの様子がしれないように息を殺してました。

とにかくスタートしない夫婦です。団体はやっと起きだしたばかりで、当分出発する気配もない。仕方なく私は渋々出発したんです。

こうなったらこっちも意趣返しをしなくちゃ・・・出発したことを悟られないように、クマ用の鈴を鳴らさないように・・・ドアも静かに閉めてスタートしました。

結局、競輪のトップ引きの様にトップを引かされて、クマの危険性が最も高い登山になりました。とにかく【熊が出た】の張り紙があっちこちにあるので・・・それはそれは気持ちよくありません。

夜は明けているものの登山口から樹林帯に入ると真暗で、クマが近くに居ても気が付かないほど暗い。そんな中をトップで行かされました。

でも腹の中では【誰にも出発したことを悟られていない】事が、小気味よかったんです。みんなまだお互いにトップを押し付け合っていることでしょうから・・・。

五合目になって視界が開けると、一気に緊張感が解けました。御来光には間に合いませんでしたが、素晴らしいお天気の登山となりました。

八合目では雄阿寒岳(おあかんだけ)が望めました。先ほどまでは雲海の上に山頂が覗くだけでしたが、トップを引いたご褒美に素晴らしい眺望が頂けました。

山頂のお釜の中には茶色い色をした【赤沼】と青い色をした【青沼】がありますが、いずれの沼も綺麗な色あいで目に飛び込んできました。ガスはすっかり無くなっています。

山頂からは阿寒富士が手に取るような位置で望めます。本当に富士山を髣髴させてくれる山でした。行って見たいけど・・・今日は待ち合わせがあります。

下山にかかると続々と、登山者がやってきました。スケートの競技に【責任先頭】という制度がありますが、この人たちには絶対一度はトップを引いて歩いてもらわないと・・・腹の虫が治まらないな~。

足寄を抜けてホロホロが待つ平取に着いたのは、13時を回っていました。疲れはしないか・・・と心配していただいたようで、申し訳ない気持ちでいっぱいです。がっ・・・マグロの様に動き回る性格は・・・直せないなあ!

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