今回の北海道山旅の主目的は【幌尻岳】と【トムラウシ山】に登頂する事でした。だからこの山に登らないで帰る訳にはいかないんです。
幌尻岳が百名山中、最も難しい山と言われるのはそれなりの理由があります。まず日高山地なのでヒグマが沢山生息している・・・事は置いておきます。
最も厄介な条件は【雨が降って川が増水すれば山に入れませんし、登っている時に雨に降られれば山に閉じ込められる】事なのです。要するに登山にも下山にも、二十数回の渡渉(川を横断する)を繰り返さないとなりません。
毎年、何人かがこの川の犠牲になっています。ですから川の状況次第では送迎のバスが動いてくれませんので、最終ゲートまで歩いて行く事になります・・・が、そんな人は居ません。危険だと判っているのに、命を懸けて山に登るのはアホでしょう。
一方閉じ込められた方も幌尻山荘で川が減水するまでジッと待っていれば、無事に帰って来られます。バスが動かないので登ってくる人は居ませんから、山荘を追い出される事が無いから安心していつまでも待てます。
ただし食料は心細くなりますけど・・・山荘にはカップラーメンすら置いてありません。私たちも閉じ込められた時の念のため、三日分ほど担ぎ上げました。荷物が多くなり、それもこの山の難しさに拍車をかける要素です。
何故、【山は逃げない】と判っているのに、亡くなるほどの冒険を犯すのか不思議ですが・・・我々沢の経験者と違って、どれほどの水位や水勢だとどれだけ危険か? の判断が点かず気が付いた時には足を浚われているのでしょうね。
一旦転倒して流れに身をさらしたら、ザックの重みや浮力などで流されるのを止める事は不可能になります。川を渡ろうとするのは、経験不足なのでしょう。
また最初から水位が高ければ山荘で待ちますが、途中まで下ってしまった場合は山の中で水位が下がるのを待つ事になります。これは待てませんよね・・・大概の方が『今の内ならまだ安全』と都合よく考えるはずです。それが悲劇を作るのでしょう。
いずれにしても山の中でジッと耐えて、減水するのを待つのは至難の業。何度も経験していますので、その気持ちは理解できます。ヒグマの恐怖も追い打ちをかけるでしょうから・・・。
そんな訳で幌尻は最難関の山と言われるのですが、この山とトムラウシ山が私は双璧だと思っていました。たまたま【山友】のホロホロ三世も幌尻には登っていませんでしたから、一緒に登る事をお互いにメリットを感じたようです。
さっきも言いましたが・・・雨が降ったら送迎バスが動いてくれませんから、幌尻山荘の予約は無駄になってしまいます。そこでホロホロの名前と私の名前でそれぞれ別の日を予約してあったんです。何としても今回登って置かないと・・・強い決意でした。
幌尻山荘は完全予約制ですが、ヒグマのいる屋外で寝たい人は居ませんから全員が必ず予約します。百名山人気で黙っていてもほとんどの日は小屋が満杯になるほど宿泊者がいます。そして雨が降ってバスが運行しない時は、本来は宿泊料は返金になるはず。
ですが山荘維持の協力金として寄付する旨の一筆を取られます。こっちも『まあ確り管理してくれるんなら仕方ないか』と寄付します。だから山岳会は雨が降っても降らなくても全く困らない仕組みがあるんです。
登山口の豊糠山荘で登山者を足止めできれば、それはそれで地元にお金が落ちますから・・・。必然的に対応もおざなりになってきますが、だれも文句を言う人は居ません。
特に呆れるのは寝る時しか山荘に入れて貰えない事・・・。
写真は表に敷かれたブルーシートで食事の準備をする登山者です。
何から何まで本当に【最難関の山】を、何とか終えました。写真は悪名高き幌尻山荘です。
岩場を乗り越えるホロホロと奥さんです。
コメント
幌尻岳は、幌尻山荘のせいで難関になっていますね。
大変でしたね。
でも、なぜ新冠コースから登られなかったのでしょうか?
林道が大変ですが、途中の景色も良く何より気分がいいままで登山できますよ。
ラックさん、コメントありがとうございます。
既に何回か登られているのでしょうか?
事前に知っていれば、少しは検討したかもしれませんが・・・・・ゲートがあって15時間ほどの歩きと聞いていたので、最初からあきらめていました。
それと・・・異常にヒグマが浮ュて・・・誰か一緒に行ってくれる人が居るコースを選択しました。
気分がいいのが何よりですね。その日の担当者に寄っても印象は違うのでしょう。小屋の方には【山の良い思い出づくり】に協力してほしいものです。
まあ・・・世の中いろいろありますから、我慢の範囲でした。