出羽三山神社の荒行と精進料理
出羽三山とは湯殿山、羽黒山、月山の総称でそれぞれ神仏習合の権現を祀る神社がある。
登山をする私は・・・月山神社本宮を吹雪のホワイトアウトの中で参拝し、現役時代に会社の出張で羽黒山神社に参った事がある。
残念なことに湯殿山神社には、お参りがかなっていない。
そもそもこの地域は・・・山釣りに夢中になっていた私としては、ホームグランドのような地域ではあった。
三山神社に参った事が無かったのが不思議なほどである。
羽黒山神社参拝はラッキーなことに、天童市で全国会議が開かれ、主催者側から案内していただいて叶ったモノ。
が寒河江川流域や梵字川などを釣り歩いていた私にとって、この時が初めてとは何とも奇妙なきっかけではあった。
団体の観光バスを降りて杉木立の階段を上って行くと、国宝の五重塔が聳える。
田舎育ちの私はこれまで見た経験がなくて、カルチャーショック。
そしてもっとショックだったのは、山伏装束の集団に境内で遭遇した時のガイドさんの話。
どんな修行名かは知らないが、ガイドさんが語るには扉を締め切ったお堂の中で、杉の葉を燻しそれに耐える修行があるそうで、鼻水も涙もどろどろになるほど出るとか。
足袋裸足で山中を駆け回り、マムシにかまれることもあるとか・・・聞いただけで気が遠くなる話。
この修行が1週間も続くとか。今、調べると『峰入り』というものだろうか!
私にとっては『熊野奥掛け』以前に知った修行だった。
その後の釣り旅で羽黒山神社の末社、西川村の大井沢集落で修験者らと地元の人が行う『火渡りを』体験する。
が多くの人が歩いた後は・・・火と言うよりは暖かい灰の上を歩いている感じで、辛いものではなかった。
とうてい杉の葉で燻されるのには及ばない。
羽黒山神社斎館は593年に開山され、江戸時代まで残された多くの僧坊寺院の1つで元禄10年に再建された寺院だ。
建物自体が2005年に鶴岡市の文化財に指定されている。
明治の神仏分離の際、山内の30余坊が取り壊された中、神社の斎館として唯一残された。
往時の山伏たちが住した遺構としては、現存する唯一のものである。
この初訪問時、羽黒山神社斎館で頂いた精進料理も、ショックと言えばかなりのショック。これほど美味しいごちそうを、人生で未だ食べたことがないと断言できる。
予約が必要だが、これは食べてみる価値が大いにある。
出羽三山山麓で採れる旬の素材が食材で、寺社に残る独特のしきたりを守った料理が御膳に並ぶ。
特にゴマの料理とみその料理は、初めて食した私にとっては味わい深く、この世の一品と言ったら『これ!』と感じたほど。
山菜料理の種類も豊富で、肉・魚がなくても物足りなさを感じることなく、満足感で包まれる。
永平寺でも食べたことがあるが、いずれも私の記憶の中で甲乙つけがたい双璧の料理である。