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56. 鹿島槍ケ岳

日帰り強行で地獄をみた・・・鹿島槍ケ岳(南峰)・爺ケ岳(中峰)

メ モ
登頂日 06/08/04
天 候 快晴
百名山登頂順 63番目
標 高 2,889㍍
登山口 扇沢(大谷原下山)
同行者 単独
温 泉 馬羅尾天狗原温泉 すずむし荘
弱放射能泉 500円

タイム
場所・地点 往路 (着) 往路 (発) 復路 (着) 復路 (発)
扇沢 : 6:50 : :
種池山荘 9:30 9:40 : :
爺ケ岳 10:30 10:35 : :
冷池山荘 11:20 11:30 : :
鹿島槍山頂 13:35 13:50 :
冷池山荘 14:55 15:15
西俣出合い 17:40 17:45
大谷原 18:35 扇沢までの
タクシー代金
6,000円
所要時間
11:45
歩行時間 登り
6:20
下り
4:20

平田影郎

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 5時に登り始めれば十分に日帰りが可能だと自信はあった。例え平日でも夏山本番、小屋の混雑はイモを洗うようだろうから絶対日帰りに限る。ところが佐久を過ぎたあたりから瞼が重くなって、危なくて走っていられない。仕方なく東部湯の丸SAで少しだけ眠ることにした。ところが・・・ところが、目が覚めると既に時計の針は5時を回っていた。しまったなー・・・。扇沢にはかなり飛ばしたのに7時になってしまった。最悪小屋泊まりも覚悟して登り始めた。そんな状況の中でも橋の袂に一台分のスペースが確保でき、扇沢の駐車場に車を置くより例え10分でも早く出発できたのは運が良かった。

 柏原新道は本当に歩きやすい道で、全く疲れを感じないまま2時間半ほどで種池山荘の屋根が見えた。途中雪渓のトラバースがあり、3人のパーティが私に呼びかけている。

 『今、岩が落ちて行った。見ていてあげるから早く渡れ』

 見上げると確かに今にも滑り落ちそうな岩が沢山あった。悪場はここだけであった。

【唯一の悪場・雪渓のトラバース】
【種池の屋根が見えた】

 爺ケ岳への登りにかかり広い尾根道が続く。限りなく広がる青空と冠雪の山並みとゆったりとした尾根は実に気持ちがいい。

振り返ると種池山荘の赤い屋根も一幅の絵のようにロケーションの中に溶け込んでいる。まるでプロの山岳カメラマンの写真集の中に見かけるそれである。

 先程まで雲が巻いていた槍の穂も今はくっきりと姿を現した。こんな日にここを歩く事が出来る幸せをひしひしと感じる。しかし目的の頂はまだまだ長大な尾根の向こうに聳えていて、心なしか雲が湧いて来たような気がしたし午後には雷雲も発生するらしい。

【目標は遥かかなた】
【振り返ると絵のようなロケーションが】

 脚力に不安のあった私は爺ケ岳は最高峰の中峰だけにした。この際目的はあくまで鹿島槍の頂上を確実に踏む事である。

その為には多少の事には目を瞑る事にした。南峰も北峰もスッパリ諦めた。

 何やらさっきから単独行の男性が私から離れようとしない。日野から来たというこの男性、何としても私をキレットに連れて行きたいらしい。一人でキレットを超える自信がないので・・・と冷池から先の事を私に相談するが、申し訳ないが今日の私は付き合ってあげる事が出来ない。何としても下山しなければ・・・。私は冷たくこの男性を突き放し冷池山荘を発った。

  少し休みすぎたのかどうもペースが上がらない。あるいはここまでペースオーバーだったのか?  布引山頂の手前で食事にし、そしてヘロヘロ・・・ヨレヨレ・・・さすが後立山の盟主、簡単には登頂させてはくれずやっとの事で山頂にたどり着いた。帰りの時間も気にはなるが、今はとにかく動く事が出来ない。15分も足を投げ出してダウンしていた。

 当初、冷池に戻って14時までだったら下山しようと考えていた。しかし今取って返せば15時には小屋に戻れそうだ。予定のリミットタイムはオーバするものの、どうしても混雑した小屋には泊まりたくない。休憩を取った私の足はそこそこ回復していた。

この足の状態ならもう迷いはない。15時に小屋に戻りそのまま下山することに私の考えはまとまっていた。

【槍ヶ岳が頭を出した】
【他人はどかせ自分はどかない】
【ついに目標だった頂に】

 かなりのスピードで駈け戻り、往きにあった人をかなり追い越した。追い越された方は走るように下る私を見ると、みんな驚いている。小屋には15時前に戻りつき、パッキング・靴擦れの治療とこれから4時間駆け下る準備をして出発した。身づくろいを見ていた人たちは『これから種池までですか?』『いいえ扇沢まで下山します』『ライトを点けて下るのですか』『そこまで暗くならないと思いますよ。7時まで明るいので・・・』と同じ会話を確実に4回は繰り返した。分岐まで戻ると目の前には爺ケ岳の登り返しが立ちはだかっていて、いかにも億劫だ。いきなり赤岩尾根に下山路を変更して私は赤ザレたヤセ尾根を下り始めた。

 途中たった一人の登山者に会っただけだった。時間が遅いと言うことも確かにあるが、やはりこのコースは人気がないと思う。

柏原新道に比べたら数段厳しいし、稜線からの500㍍はそこそこ緊張を強いられる。それでも私にとっては爺ケ岳への登りを回避できるし、確実に明るいうちに下山できるというメリットは大きかった。赤ザレが一段落しあと2時間ほどで西俣と思える場所でタクシーに電話を入れた。大谷原に18時30分・・・と指定したが、果たしてこの靴擦れの痛い足で間に合うのだろうか。高千穂平でも再び靴擦れの治療をしたが、痛みは一向におさまる気配はないし、下りに入ってからは更に親指も当たるようになってきた。紐をしっかり締めなおしているのに・・・もう・・・何が原因でこうなるのか全く理解できず破れかぶれになっていた。足が壊れようと・・・槍が降ろうと歩ききる覚悟はとっくに出来ている。泣きながら・・・単なる表現の問題ではなく私は本当に泣いていた。

こんなに辛い思いをさせられて・・・こんな靴を売りつけたI○I石○スポーツを訴えてやる。

 長い長~い赤岩尾根、一気に下っている割には谷がまだまだ深い。堰堤から落ちる水音が聞こえ始めてからも小1時間下ったろうか・・・やっと地下道のある堰堤が見え始めた。しかしそれからも小1時間下った気がする。更に“もう着いたのだ”と私に思わせてから出てきた看板には【西俣出合い15分】と書いてある。なんとガッカリさせられたことか。それでもタクシーを呼ぶ時に予想した時間から10分も違わずに、十数年前の思い出【黄色い標柱】と対面できた。

 後は大谷原まで1時間歩くだけである。十分明るいうちに到着できそうである。

【赤岩尾根、西俣出合】
【地下道のある堰堤】
【地下道はこんな風】

 冷池山荘のアルバイトスタッフ(若い女性)は実に教育不足である。勘違いも甚だしい。客を泊めてやっていると思っているのか面倒くさがる態度と言葉遣い・・・ベテランのスタッフが出てきてうまくとりなしてくれたが、ブームに乗って客が切れる事がない現状が悔しい。オーナーはそれでいいと思っているのだろうか、それともやはりきちんと教育したいが目が行き届かない・・・のか、そこが知りたい。同じオーナーでも種池のビールを販売している若い女性スタッフは、非常に気持ちよかった。『ゆっくり楽しんでいってください』と皆に声をかけていた。同じ時給?あの女と・・。

  お金にも精神的にも余裕と自信のある団塊の世代が、妙な理解と寛容さを演出するのであの手合いが助長してしまう。厳しさも必要だ。

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【フウロ】
【キキョウ】
【リンドウ】
【ヨツバヒヨドリ】
【チダケサシ】
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