ぶらり旅・道東編
2004/09/23~26
今回の旅は釧路湿原を電車でゆっくり走ってみたくて釧路着の便にしました。釧路東急インは18時になってしまいました。夕食は幣舞橋(ぬさまいばし)まで歩いて、楽しみにしていた岸壁炉端で海の幸をいただきます。私たち夫婦には高価な食材は無理ですが、秋刀魚やイカでも十分堪能できました。滴り落ちる魚油に炭火が燃え盛り、油がはじけ飛んで着ているものは台無しです。北海道の味は野趣溢れたものでした。
翌朝、釧路発9時のしれとこ号に乗り込みます。1両だけの電車は観光客でいっぱいですが、早く並んでいたおかげで座る事ができました。
釧路湿原は雄大でした。驚いたことに丹頂鶴がいて、カメラマンが沢山群がっていました。9月では早い気がします。もう飛来したのでしょうか・・・と考えていると誰かが丹頂はいつも居ると言っています。知らずに恥をかくところでした。まさか【おとり】の置物ではないはずですから。
残念ですが雄大なロケーションも、釧路から僅か一時間ほどの摩周駅でお別れです。改札口では友が丹頂のように首を長くして待っていてくれて、ガッチリと固い握手でした。早速車で摩周湖に向かいます。深みのある藍色は【摩周ブルー】と呼ばれるそうです。残念ながら霧に抱かれた摩周湖ではなく、摩周岳の山頂が湖面にくっきりと映っていました。
弟子屈の町を抜けて美幌峠に向かいましたが、峠からの眺望も雄大な北海道そのものでした。串に指して丸ごと焼いたジャガイモは絶品で、芋嫌いの私でさえもう一本食べたいほどでした。
ペンションに到着し早速楽しみにしていた手作りの露天風呂に向かいます。車で数分のところに友が一人で作りました。大きな浴槽にかけ流しの温泉が溢れる感動のお風呂です。
広いダイニングの大きな窓の外にはえさ台が設えられ、ゲラやカラの仲間がいつもやってきます。ダイニングでコーヒーを飲みながらバードウオッチングが楽しめるのです。これまた感動です。
敷地内を蝦夷鹿が横断していきます。何というロケーションなのでしょうか。裏を流れる小川には昨年シャケが登ってきました。夜、尾びれがたたく水音で目を覚ましたそうです。が、獲ってはいけないと思って獲らなかったそうです。
翌日は野付半島を希望しました。鮭の科学館に立ち寄ってからトドワラに向かいましたが、あまりに遠すぎて時間がなくなってしまいトドワラの散策は中止です。トドワラは朽ちた木々が僅かに残るだけで、すっかり荒廃(?)していました。昔写真でみた荒々しい残骸のイメージは全くありませんでした。
展望台からは国後を望みますがこんなに近いのに遠い遠い領土です。複雑な思いで見つめました。
北の最果ては秋も深まり、僅かにフウロだけが咲いていました。
帰りは根釧台地を一望する開陽台に立ち寄りました。十勝を髣髴させるダイナミックな眺望はまさに“でっかいどう”でした。
今回の旅は友夫婦に多大な迷惑をかけましたが、本当に有意義な旅でした。友が田舎暮らしを選択し、夫婦二人ともが楽しんで生活している様子をしっかり見る事ができました。それがどんな風景よりも見ごたえがありました。もし・・・後悔している様子を少しでも目にしてしまったら、私自身も何か辛いものになっていたと思います。羨ましくなっている自分がそこに居ました。妻がくしくも言いました。それが全てを言い当てています。
『ああ! 私も大好きなコーヒーを飲みながら、窓辺のえさ台にやってくる鳥を一日中見ていたい』
名残り尽きない北海道を発つ朝、友が『是非とも北海道の渓を見てくれ』と言います。13時には女満別空港を飛び立つ私は時間的に無理では・・・と思いましたが、スケジュールは総てお任せの旅行。しかし私の心配は杞憂にすぎました。友が案内してくれる渓は友のペンションから車で僅か10分です。
釧路から網走を結ぶR391を川湯温泉付近で横切るアメマス川には鹿よけのネットフェンスの扉を開けて空き地に車を突っ込んで入渓します。用意された道具をみると、竿はペンションの前オーナーが敷地内の池に放したレインボーを宿泊者に釣らせるためのもので、かなり痛んでいてしかも仕舞い寸法が1.5メートルはあります。とても渓流竿とは言えません。道糸も何年か使用され変色していて弾力はありません。足回りもウエィーダーなどあるはずがなく、代用されるのはカラーブーツというシロモノで、俗に言う色付きの長靴です。ホームセンターで1500円ほどで売っている例のヤツ。このカラーブーツは沢でも雪山でもグリップ力があってバツグンにいいらしいのです。そして肝心の餌は友がいつも使っているイカゲソを食紅で赤く染めたもの。食いつきが良く、なにより餌もちがバツグンです。装備を万全に・・金物まで用意して源流に入る我々の感覚とは全く違います。気取らないと言うか手軽にと言うか、ロケーションに溶け込むように・・・北海道はこれで良いに違いない。いかにも北海道らしく大らかなものでした。
ここはあっさりとイワナ(アメマス)が釣れてしまうフィールドです。一週間前に東京の○○女学院の女子生徒が自然体験授業でこの地に滞在し、このアメマス川で自然と触れ合ったらしい。友も駆り出され“かいぼり”を手伝いました。捕まえたアメマスに初めて触れた子供たちは大いに喜んでくれたそうです。当然、尺以上の固体も確認されました。
『ちょっと待って!! それじゃ今日は釣れないでしょう?』『大丈夫だと思うよ』
まったく・・大丈夫です。余計なほどに飛びついてきます。北海道はでっかいどー。