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旅あれこれ 東北10【玉川温泉点描】

玉川温泉点描《秋田・仙北》

2015/09

トラブル続きの玉川温泉。数年連続してウイルス性の食中毒などが出て、僅か一日で宿泊客が追い出される事態にも・・・。

さすがにこれでは安心して湯治もできず、数年遠のいてました。

とにかく免疫力がない妻の免疫をつけるための湯治ですから、妻が病気になっては話にならない。

最近は管理も行き届いてきたようで、そんな話も聞きません。久しぶりに台地の恵みを享受しようと・・・出かけました。

今回は日程の都合で6日間の自炊生活です。

玉川温泉の湯治ついて・・・少し解説を。

日本一の酸性度を誇るお湯、そして世界で2箇所にしかない北投石から発生するラジウム波に浴する事を目的とします。

その酸性のお湯ですが、財布に入れてバッグにしまっておいたコインが・・・僅か一晩で変色し、お湯につけておいた包丁は刃がボロボロになります。

玉川温泉一帯に充満する水蒸気が湯治用の部屋にも流れ込みコインを変色させる。そしてここで暮らすだけでそのラドンを含んだ酸性の水蒸気を吸い込む事で免疫力を高めると信じられています。

さらに酸性のお湯は人間のツボを刺激し、細胞を活性化させるのだと・・・。

これが玉川温泉に通う湯治客の哲学なのです。

《ラジウムが気化するとラドンと呼ばれる》《北投石・・・台湾の北投温泉で最初に発見され命名された。世界で玉川と2か所だけ》

よく誤解されますが岩盤にあるテントは玉川温泉のものではなく、この場所自体は環境省が管理する公園である。環境省から秋田大や玉川温泉などが参加する『玉川温泉研究会』に管理を委託している。その意味から玉川温泉は管理主体の一員だと言えなくもない。

ただ、数年前の冬に雪崩で犠牲者が出たが、玉川温泉非難が噴出したのはお門違いの感もある。責任の所在がどこにあってどう解決されたかは承知していない。

さらに、たびたびある事故だが・・・テントの中で眠ってしまって大量の硫化水素を吸い込んで、亡くなった事例がある。

朝、暗いうちからテントを目指す湯治客が列をなして進む。我が家はテントの中では岩盤浴をしないので、先を競っていくことは無い。ゆったり湯治をしようと来ているのに、ストレスをためるようなことはしたくない。

岩盤を目指す湯治客
環境省のテントエリア。
数年前の冬に雪崩で犠牲者が

テントに向かっていくと途中の歩道わきに源泉の湧出口が有る。大噴《おおぶき》と呼ばれている。

毎分9,000㍑の湧出量を誇り、川の流れのように大量に流れ下るお湯は恐いほど。

噴出するお湯が水蒸気となって辺りを覆うので、湯治客が寝ころんで水蒸気を吸い込んでいる。

主に肺や気管支を患った方が、ここで岩盤浴をしているようだ。

この石畳の歩道は台地のエネルギーが表面まで温めてくれて・・・熱くて直接寝ていられないほど・・・汗をかくことで細胞が活性化することを期待して湯治客が寝ころんでいる。

この脇にすり鉢と呼ばれる窪地があって、ここに水蒸気が滞留する。俳優の平幹二郎さんはこのすり鉢で岩盤浴をしていた。

大噴(おおぶき)脇の通路も岩盤浴の客
源泉は99℃のお湯が毎分9,000㍑と湧出量ランク上位

大地から水蒸気を噴出する場所があって、ここにネットに入れて食材を入れておくと数百度の水蒸気が食材を蒸しあげてくれる。

忙しい当時生活では、昼は調理をしないでここで芋や卵などを蒸して簡単に済ます。これがまた美味い。サツマイモ・玉ねぎ・卵。

慣れない人が出し入れすると火傷をするケースをよく聞く。数百度だから『熱い』と思った瞬間には、すでに遅し・・・だ

我が家はテントでの岩盤浴はしないと言ったが、この近くで岩盤浴をしている。

青空の下に寝転んで、大地のエネルギーを身体に受け止める・・・なんとダイナミック。

地面は冷たいから火傷する熱さまでさまざま。その中から好みの温度の場所に寝転ぶ。

ゴザを敷いて・・・熱すぎれば毛布やタオルをさらに敷いて温度を調節する。熱いのに我慢し過ぎると、背中を火傷したりもする。

経験がものを言う世界だ。

最近は予約制だが屋内の岩盤浴施設が出来て、雨の日などはこちらもよく利用する。雨の降りそうな日には、念のため予約を入れておき、雨が降ってなかったらキャンセルと言う方法を取る。

基本的には大自然のなかで、大地の恵みを頂くこととしている。

食材を蒸す噴気孔。順番取り争いで険悪な状況も

岩盤浴で期待するのは『熱』だけではない。微量の放射線が細胞に作用して免疫力が高まると信じる湯治客は、ラジウムの線量の高いところを探して寝転ぶ。

その一つの場所が玉川神社の鳥居前。ここは場所取りが過熱していて、順番取りで大変だ。地下におそらく北投石の鉱脈が有るのか、流れのように線量の高い場所が帯のように続く。

可愛そうなのはそこにある岩だ。北投石と思われて削り取られて見る影もない。初めて湯治に出かけた2001年には大石だった塊は僅か50センチほどの石になってしまった。

温泉水にも微量ではあるがラジウムが含まれていて、それが空気中を浮遊して一帯の地面には放射線量の反応が出る。

私も仕事場から何度かサーベイメーターを持ち込んで測ったものだ。

只の岩が削り取られて小さくなった。
あちこちから噴煙が上がり、生きている台地を実感

ここには地熱がないため春先や秋の早朝に寝転ぶのは辛い。上にかける毛布を持って行って寝転ぶ。

そして夏には陽射しを遮るものがないので、御覧の通り笠やビニールシートなどで覆って寝転ぶ。

観光客がやってきて・・・熱くない地面を不思議に思って、必ず質問してくる。ここから何が出てるんですか?って。

そうするとキャリアの浅い湯治客ほど知ったかぶりで説明し始める。寝転ぶ退屈な時間は、この話を聞いていると楽しい。

妻はここで30分ほど寝転んで過ごし、その間私は石に腰かけて本を読んで過ごす。タイムキーパーなのだ。

ラジウムを浴びるために人気のスペース
玉川神社前に寝転ぶ湯治客

時期によっては部屋が取れない事もあり、20キロほど離れたペンションを使うこともある。環境省の公園駐車場は8時からしか開かないので、7時半ごろにペンションを出ると、ちょうど車の流れが駐車場へと動いている。

そして時期によっては閑散とするときもあって、寂しいほど。食材を大量に持ち込む湯治客の段ボールが廊下に積まれているのだが、ご覧のように数組しか湯治客がいないということもまれにある。

この写真は自炊棟『北投荘』の廊下。

いつもは廊下狭しと食材の段ボールが並ぶのに・・・閑散
この斜面の紅葉の変化で季節を知る

炊事場の水は沢から引いた水。そしてお湯はお風呂のお湯を冷ますために沢の水と熱交換しているので、ふんだんに使用できる。蛇口を締めずに流し続けている。そうでないと配管からお湯が溢れてしまうのだ。

ガスはプロパンガスが無料で使用できる。我が家はホットプレート・電気がまなどを持ち込んで炊事している。

冷蔵庫は一日100円。

炊事場の窓から日に日に赤くなっていく、山肌を眺めるのが好きだ。

また、春、時には斜面をクマが走っている。みんなでドラム缶を叩いたりして脅しても、逃げようとしない。

後年、鹿角市一帯を騒がせたクマ、スーパーKの可能性もある。

岩盤浴では大汗をかくので、洗濯は欠かせない。洗濯機が無料で使えるが、乾燥機は有料。

食事を作る自炊棟のキッチン
ランドリーコーナーは無料

帰路は田沢湖から岩手県側に峠を越えてすぐに、道の駅『雫石あねっこ』に寄る。あねっこ・・・とは『娘さん』という方言。

ここで買ったしいたけを・・・妻の手にかかっては、ご覧の通り。フロントのダッシュボードの新たな利用方法を発見。

帰りの道の駅でしいたけを購入
妻のあってはいけない行為に驚く
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