花の百名山 高峰山・水の塔山(2,202㍍)・東篭ノ塔山(2,227㍍)・西篭ノ塔山(2,212㍍)
平田影郎
どこも行くあての無い時のために残しておいた山域だったが、ついにその時が来たようで・・・どうせなら花が残っている時期に登るべきで、その山の良い時季に登りたい。
それにしても30分ほどで登頂できる高峰山だけでは物足りない。この山域一帯を歩き回るつもりだった。湯の丸山まで行けたら、『歩いた』と実感できるほど歩けるだろう。
時間はまだ早くホテル前の駐車場はほとんど開いていた。センターの裏にあるトイレを使って出発する。車坂峠から木立の中を進み、辛い登りはホテルからの数分だけだ。登りきると登山道に沿って花が咲く。中心はマツムシソウなどの夏の花になっていた。珍しい種の花ではないが、杣道を彩っている様相は流石の【花の百名山】だ。シャクナゲの木が多く目立つので【花の百名山】の所以はシャクナゲだろう。その時期には素晴らしい花のプロムナードになるはずだ。想像するだけで楽しくなる。
高峰温泉からの道を併せて10分ほど進むと大岩がある山頂である。大岩の上にはご夫婦が陣取っていて・・・素晴らしい光景に一枚写させてもらう。山頂に祭られた神社を参拝した後、ご夫婦との会話になる。奥さんに『一緒に座って話しましょう』と誘われ、山の話をしながら1時間も眺望を楽しんだ。
ピークハンターの私は頂上に長居することは無いが、今日は別だった。会話が楽しい。
ご夫婦は夏の間だけ長野で過ごすと言う。奥さんは花が好きで『西篭ノ塔に行くとリンネソウに会える』と教えてくれた。気をつけて歩いたが今日は出会う事ができなかった。でも次回の楽しみができて、それはそれで良かった。
視線の先には富士山があり、八ヶ岳があり北アの槍があって大キレットがある。こんなに素晴らしいロケーションの山を経験した事があったろうか? こんなに素晴らしい頂だとは思ってもいなかった。100万ドルの光景である。1時間が全く惜しくなかったし、あっという間の1時間だった。もっと早く来るべき山だったなあ。実にもったいない事をした。こんな天気の日にまた来たいものだ。
高峰山を後にして林道を少し歩くと右手に登って行く分れに出会う。右の登山道を水の塔山を目指す。4・50分で山頂だ。山頂では多くの登山者がくつろイでいて、ここで終わりにする人が多いようで荷物を広げている人が多い。
向こうに東篭ノ塔と西篭ノ塔が連なっている。マイナーな山だが人気は高く、縦走する登山者が結構多い。西篭ノ塔まで1時間と少しで行ける。ザレた箇所を一回だけ通る事になるが、道は確りついていて危険はないので安心して歩けた。
東篭の塔から西篭の塔と回って再び戻ると、山頂は多くの人がお弁当を開いていて・・・ピクニック気分で訪れる方が多いようだ。
東篭の塔からは池の平湿原に下る。湿原に今咲く花はヤナギランが中心と言うので、予定していた湿原には寄らずに林道を高峰温泉を目指す事にした。
途中の道端で【アサギマダラ?】を発見する。何匹も飛んでいた。本来暖かな台湾に戻って越冬するが、日本で越冬していると言う人もいる。林道にはハクサンフウロやヤナギランが咲き乱れ、何時もならつまらない林道歩きも花を楽しめるこの時期は一興である。
珍しいカワラナデシコが咲いていた。最近ではタカネナデシコの方が目につくが、久しぶりでこれも嬉しい発見だった。高峰温泉近くの林道脇に何株も咲いていた。しかしリンネソウは懸命に・・・慎重に歩を運びながら探した、がとうとう見つけるこ事は出来なかった。眺望・花・・・十分楽しめた山行である。
念願の秘湯の会の高峰温泉に浸かる。何度訪問しても時間が過ぎていたりして、これまで縁が無かった。冬は車坂峠までの雪上車で迎えに来てくれる事で一躍有名に、またランプの宿としても知られる。
源泉の温度が低く加温して供給しているため、【掛け流し】には出来ないのだろう。秘湯としては格落ちと見ざるを得ない。少しガッカリだが・・・まあ泉質を言ったらB級の温泉である。宿泊料金だけは一流並みだが。
人気先行の温泉と思った方が良い。だが誤解があるといけないので付け加えると、宿のランクは【泉質】だけで決まる訳ではない。
私が言っているのはあくまで泉質の話である。きっと暖かな【お持て成し】で評価の高い宿なのだと思う。