困ったときの谷川岳【トマノ耳1,963㍍】
平田影郎
困ったときに選択する山は八の天狗、そして平標、谷川岳。
谷川と言えばほとんど西黒尾根がメインで、マチガ沢を歩いたのは谷川に初めて登った時だけ。
久し振りにマチガ沢を登ってみようとコースを選択した。
ロープウエイの駐車場に車を入れて、ゆっくりと歩き始めた。西黒尾根の取り付きを過ぎて、そのままマチガ沢を目指す。
ゆっくりと30分ほどでマチガ沢の取り付きへ。
多くの登山者の命を奪った谷川岳と言えども、それはあくまでバリエーションルートの話で、我々が歩く一般道は他の山と変わらない。
特段に難しい個所は無くただただ急登で、時間をかけてゆっくり進めば自然とガレ沢の頭に着く。
途中鎖場が一か所、へつりが一か所。途中の見晴らし台からは一ノ倉沢が望める。
この日も一人の登山者が大岩を乗り越えて進んでいた。
2時間弱で西黒尾根と合流する。ここで休憩を取るパーティが多い。
もし西黒尾根を登っていたとすると、この手前に《ラクダのコブ》という岩場があって、5ピッチほどの鎖をよじ登ることになる。
この日は白毛門や笠ケ岳も歓迎してくれていた。
さあ・・・ここからは格段の急登に変化する。青息吐息で・・・喘ぎ喘ぎ・・・とくにザンゲ岩までは谷川岳の一般ルート上、最も厳しい。
そのためにロープウエイで天神尾根を利用する登山者が一番多い。
天神尾根の方向に目をやると・・・ありの行列のように登山者が続いている。
この日の山頂の混雑が思いやられる。
谷川岳に挑む場合は、朝早い行動をお勧めする。
先ほどまでと打って変わって山頂はガスが巻く。こんな天候が多くて想定の範囲だ。
山頂と小屋の中間の草陰で弁当を開く。
隣に初めて登山に来たというカップル。コンロを出して火を点けようとしているが、圧力で着火するタイプではなく、ライターが必要にみえるのだが・・・。
そう話しても・・・前にも使かった事があるので間違いなくライターがなくても点く・・・と言い張る。
違うのになー・・・と思っていたら、更に隣にいた若者が『私も同じものを持っているけど、ライターで点けないと点きませんよ!』ってそれ見た事か! 素直に聞けば彼女の前で恥をかかずに済んだのに。
かえりは西黒尾根を帰ることにして、ラクダのコルで休んでいると足を痛めた同年代のご婦人と旦那さん。
どっちのコースが楽ですか・・・と問われて。まあどっちも同じようだと教えたけど。
そしたら私の後を付いて西黒尾根を下る事に。
鎖場は1か所と教えたのが良くなかった。鎖を1本下るだけと思ったようで、5本も下ることになって少しおかんむりに。
ラクダのコブという1か所という意味だったんだけど、しっかり伝わらなかったようだ。