北横のつもりが池巡り・・・蓼科山
平田影郎
10年以上昔に一度登頂済みの山だが、今回北横岳との縦走で再び計画してみた。8時になろうとしていたが遅い割には7合目駐車場はゆったりスペース。
簡単に登頂できる山だからなのか、みんなスタートが遅いようだ。しかし下山してみて驚くが駐車場は満車状態であった。
蓼科山の山頂は前回と違ってガスが巻く。相変わらずゴーロ帯の中にポツンと寂しい山頂標。人気の百名山なんだから少しは設備投資しても・・・と考える。
蓼科山を登頂した後将軍平まで戻っていよいよ目的の初コース。ところが【将軍平】から【天祥寺平】に向かうコースは人気がないのか、歩いている人は全くおらず寂しいコース。少しは登山者がいないと気持ちも燃えてこない。
天祥寺平から蓼科山を振り仰ぐとガスはすっかり取り払われ、山頂のヒュッテまでくっきり見えていた。このあたりまで来るとご夫婦
の二人連れ、5人のパーティにやっと出会う。大河原峠からもピラタスロープウェイからもアクセスが良いのだから、人気は
高まっていいはずなのだが・・・不思議。
流石に花には遅く、数少ない株数のフウロやトリカブト、ハハコの仲間が地味に咲いているだけ。盛期にはものすごいお花畑だろう
と想像させる。
亀甲池に到着すると多くの方が食事をとるなど休憩していた。名古屋からのパーティの隣になり、自然とあれこれ会話が弾む。このパーティとは双子池でも一緒になって、話をする事になる。ピラタスのロープウェイから周回で来る登山者が多いようで、それは双子池でも一緒だった。
雨が少ないせいなのだろう・・・亀甲池は渇水の状態で、中央付近が僅かに水面を作っていた。
シラビソの樹林の中を双子池を目指す。木の株や大岩に張り付いた緑の苔が美しい。この風景は八ヶ岳の特徴的な感じがする。
八のあちこちにこんなロケーションがある。富士の樹海を彷彿させる。苔の中に実生苗がポツンと秋を告げていた。
亀甲池から僅かな時間で双子池に着く。砂浜ではテントを設置している登山者がいた。こんなロケーションに溶け込んで、まったりと時間を過ごす・・・究極の贅沢だろう。雌池を回って双子池ヒュッテに向かう。
コースの脇にはテントサイトがいくつも用意されていたが、トイレや水場が遠くて大変かも知れない。逆に煩雑さを目にする事がなくて素晴らしいサイトと言えるかもしれない。
ヒュッテは想像していたロマンチックな佇まいではなく、ごくありふれた普通の建物。少なくてもログハウス風なんてイメージしていた私の期待は大きく裏切られた。【双子池ヒュッテ】って響きが何か物凄く心地よくて、昔から憧れがあった。が、今回で消えた。
双子池と言うからには二つある事がすっかり頭から飛んでいた。ヒュッテ前のベンチで休憩しようとして、雄池が見えて思い出した・・・と言うか【なるほど】と納得。
水は透き通っていて、色はエメラルド・・・こっちはロマンチックでした。ここまで来て良かった。
恋人同士の隣で無粋にもおにぎりを食べたりエネルギージェルを飲んだり。結局男性があれこれ話しかけてくれて・・・相手をしてくれた。それにしても気の利かないオジサンだったなぁ。
この恋人同士もピラタスロープウェイに戻るとの事。こんな登山者が多かった。
食事をしていると亀甲池で隣だったパーティがやって来て、また会話をするも僅かな時間でお別れ。私は双子山を目指す。コメツガと笹の樹林の中を30分も登ると一気にロケーションが開けて山頂か?
標識のところで先行者が休憩中。ゴーロ上の山頂からは右手に前掛け山と蓼科山。左手には大岳と北横岳に続く尾根が迫っている。
素晴らしいロケーションに思わず山頂の端っこまで進んでみると、何と双子池が見える。多分雌池だと思う。
たおやかに広がる台地上の尾根は、私の好きな【平標山】を彷彿させて心が安らぎを感じる。優しい表情が覆う反面、木々は風に煽られて耐えているように立っている。こんな優しさの中でも、自然の厳しさがはっきりと分かる。
ここでも僅かな株数の【タカネマツムシソウ】が残っていた。大河原峠に向かって百メートルも移動すると・・・アレレレレッ・・・ここにも山頂標が?
そう言えば先ほどのところに【山頂】と言う表示は無かった気がする。【双子池】と【大河原峠】を示す道標だったのかな~~?
双子池から登った登山者は、登頂したと勘違いして下山してしまうかも。それにしてもゆったりとした・・・たおやかな山頂で、私はこんな感じが大好きだ。
10分も下ると大河原峠である。今日は久しぶりの靴で挑んだ。少し豆ができていた。双子池に向かうと決めた時は、ここから再び将軍平に登り返して七合目に下山するつもりだった。
下山してみるとその意欲は無くなっていて【夢の平林道】を歩いて帰れば、距離は増すものの痛みは軽減されるだろうと思い直した。
望月の商工会が営む売店でコーヒーを一杯注文して、10分も休憩したと思う。そしてトイレを使ってから、林道で一の鳥居を目指す。おそらく3時間弱歩く事に。
駐車場では先ほど山頂にいた方も下山してきていた。足が痛い今日は・・・誰か同乗させてくれないかなー・・・と淡い期待を持ちながら歩く。
5・6台の車が無情にもスピードを上げて通り過ぎて行く。トキンの岩を過ぎた時、一台の車がスピードを落としてすり寄ってきた。
窓から女性の方が顔を覗かせ『良かったら乗って行きませんか』
ありがたく乗せていただきました。今シーズンはこんな親切に恵まれ続けていて、【山】の優しさを何度も身に染みて感じている。
滋賀から来ていたご夫婦。短い時間だったがいろんな話を聞く事ができて、それも今回嬉しい事の一つだ。
10年前にほとんど使わずに諦めて放置していた靴が、まあまあ使えると判ったことも収穫の一つ。
そして、何より山登りをする以前から不思議と憧れを抱いていた双子池ヒュッテに行けた事。ただしこれは想像とはかけ離れていた
が、池の美しさがバッドマークを消してくれた。