25-1. 筑波山
平田影郎
どうしても42座のまま年を越したくなかった。10月の磐梯山のあと年内にさらに数座予定していたが、身内に不幸があって途絶えたまま此処まで来てしまった。
此処まで来ては筑波ぐらいしかない。
妻に用事が出来て結局一人で出かけることになってしまった。何となく気が重い。
12月の寒い朝に暖かい布団と決別するには心の中に相当の意義を見出せないと挫けてしまうのが常・・・なんとか勝つことができた。
館林を抜け古河に差し掛かる。初めての街のことなかなかR125にたどり着けない。結局大きく迂回してしまった。
更に下妻バイパスでも左折のポイントがわからず、目的の筑波山を目の前にしながら山麓をウロウロしてしまった。
最初から心が求めていない山行。ただ43座目のための山行に・・・ウロウロさまよっている間に、無性に空しさがこみ上げてきた。
“何をやっているんだ俺は・・・こんなことに何の意味があるんだ”と自分を責める。
具合の悪い妻を置いてまで、一人で出かける意味はとうとう見つからなかった。
8時半にロープウェイ駅に着いた。確認すると始発は9時20分、ゆっくりとパンとコーヒーで朝食とした。
駐車場は閑散としていて登山者と思える人はほとんどいない。
曇り空でしかも時折湧くガスで男体山頂上は眺望が期待できそうにない。女体山からは霞ヶ浦がうっすらと望めた。男体山に移動する。
山頂の筑波山神社奥宮は以外に威厳が感じられる。屋根には【葵の紋】が掲げられていた。
間違いなくご利益があるに違いない。お願い事は女体山と同じくしっかりさせていただいた。
段々天候も回復し歩いていると汗ばむ程、フリースを脱いで抱えて歩いた。お土産屋さんの前を抜けてガマ石までやってきた。
子供たちがガマの口に石を投げ込んでいるが石は仲々口の中にとどまってくれない。
「おじさんがやってあげるよ」と子供たちをどかして挑戦した。
もちろん“石が口の中に入ると叶う”という願い事は私自信の願い事だ。見事に一発で石は口の奥の方に留まった。
気乗りがしないあれこれ考えながらの山行も、来て見ればやっぱり何がしかの意義が見出せ、また気晴らしにもなったようだ。
しかし日本中の山の中から百の中に選ばれるほどの山かどうかは自分で確認してもらいたい。