念願の北八・・・天狗岳
平田影郎
八ヶ岳には何か惹かれるものがあって、常にターゲットには成っていた。2時間ほどのアプローチで登山口まで行けるのに、アルプス的な雰囲気はやはり魅力だ。
とりあえず一座は極めておかないと・・・と思い立ってからすばやい行動だ。とりあえず・・・としては天狗ぐらいだろう。周到にコースタイムを計算し十分自信を持っての山行だ。山を始めたばかりの私にとっては、天狗すら真剣勝負に近いものがあった。
白駒荘から中山への登りは大石がゴロゴロ、一段一段が高く非常に歩きにくく早速アゴを出してしまった。
こんなことで計算どおり歩く事ができるのかと不安になったが、中山に登りきると後は自分のペースを掴む事ができた。中山峠を過ぎると左側がスパッと切れていて冬には雪庇になりそうな場所があった。
また天狗の登りにかかる前には大岩が積み重なったところもあって、ここも冬にはシュルンドになるに違いない。確りとメモリーにインプットした。左手後方にはイナゴの南壁が恐ろしいまでに切り立って、私を圧倒している。
天狗の登りはそれ程ダメージのある登りではなかった。残念な事に山頂はガスで何も見えず・・・ひじょ~に・・くやしぃ~。初めての山域、八ヶ岳のロケーションをしっかりと瞼に焼き付けたかったなー。予定の西天狗も放棄してしまった。
山頂には20人ほどが食事をしていた。みな一様に残念がっていた。
妻に電話を入れてみると何とこれが通じてしまった。初めて知った。この後の山行では携帯が私の玩具と化し、山頂から電話を入れられて迷惑する人が続出した。帰路は白駒荘の高台から白駒池を望み、予定を変更して白駒池に下って、さらに池をゆっくりと周遊して麦草峠に戻った。
中山からの下りで若い美人の奥さんに会った。三才ぐらいの子はお母さんの手を借りながらも、懸命に頑張っている。あまりに辛そうなので声をかけると「黒百合ヒュッテの食事が美味しいので泊まりにいく」という。
思わず一緒に行きたくなってしまった。まさか新手の客引きではあるまい。