群馬-1. 荒船山
初めて登山
平田影郎
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妻が紅葉を見たいというので10月初旬から彼方此方出かけていた。特に妙義には上旬、中旬、下旬と3 回も出かけたのにどうもタイミングが悪い。フラストレーションはたまる一方で何処かで妻のガス抜きをしなければならない。そこで荒船山に登り艫岩から内山峠の紅葉を見下ろすのがいいだろうと話は決まった。
下仁田の相沢集落の登山口を迷いながらも何とか見つけ、車を道路わきに置かせていただいた。鬱蒼とした杉林の中の登山道は紅葉など数える本数しかなく、暗く展望のない辛い登りが続く。山歩き初めての妻は体力だけではなく他にも心配ごとがある。ヘビや熊が出たらどうしようと気もそぞろである。
きついつづら折れの登山道を「もう少し」「もう少し」と騙しながら高度を上げて行き、とうとう切り立った艫岩が右手に見える場所までたどり着いた。だがそこからでも更に30分以上あったと思う。
工事現場に設置されているような足場階段を登ると、大勢の人が行きかう艫岩であった。笹に覆われた広場を展望の利く場所に移動し内山峠を見下ろした。印象として残っていないということは、それほどの紅葉ではなかったのだろう。しかし左手奥に望む北アの頂は真っ白く雪に覆われていた。今にして思えば後立の盟主、鹿島槍か五竜か白馬か。はじめて見た冠雪のアルプスに妻は感嘆の声を上げていた。
この時二人は自宅から見える全部の山に登ることを、ライフワークにしようと約束した。
妻にとってはあんなに辛い登りだったのに、山頂では六十歳過ぎの女性が孫と思しき一年生ぐらいの子をおんぶして登頂してきた。驚いた妻が聞くと、どうも別にルートがあったらしい。そちらは全く楽勝だったという。妻大いにガッカリする。