仙人岱は花盛り・・・八甲田山
平田影郎
再び妻の玉川での湯治、送迎を利用して春に断念した八甲田がターゲット。
妻を玉川に送り、チェック・インを見届けると私は酸ヶ湯目指して車を走らせた。
酸ヶ湯には夜7時までに到着すれば十分なので、高速道路を使わずにゆっくりロケーションを楽しみながら走る。
碇ヶ関の道の駅で大休止とし夜の食材を調達。この寄り道は実に楽しい。
知らない地域の人々とのふれ合い、知らない文化の吸収、話題の蓄積・・・。ここには日帰り温泉施設が併設されているが、とても入る気にはならない。
どうせ単純泉の循環・・・東北は温泉の宝庫・・・バスターとしてここまで来てつまらない湯に入るわけにはいかない。
大鰐温泉の街では案内板が不親切でさっぱり見当がつかない。駐車してじっくり探そうと思ったが駐車場も見当たらない。
当然のように市街地の道は狭くて入組んでいて・・・観光客にちっとも優しくない町であった。
大鰐での入浴をあきらめ峠を越えて黒石温泉郷に向かう。しかしこの付近は浅瀬石川ダム(紅ノ湖)で湖上祭が催されており、温湯(ぬるゆ)も落合温泉も車を停められないほどごったがえしていた。
今日の入浴はあきらめ酸ヶ湯に向かう途中、運良く「大河原温泉」という看板を発見し、余り期待せずに行って見るとこれが意外、集落で管理する「ふくじゅ草」と言う施設はきれいで、単純泉ではあるもののかけ流しのいい湯であった。
酸ヶ湯温泉裏の大駐車場には私の車を含めて3台しかおらず、さびしい夜であった。
翌朝目覚めると5時。5時には出発と思っていたので少し寝過ごしてしまった。隣には春日部ナンバーの車。
出発が一緒になり同郷という親近感から一緒に行く事になった。
登りにかかり私の足が遅いと判るとじれったそうだ。
「お先にどうぞ」と言うと「そうですか、私はせっかちなもので」と言うが早いかぐんぐん登って行ってしまった。
このあとこの方の背中を二度と見ることはなかった。
私も何時になったらあれぐらい自信を持って歩けるのか。一生ないかもしれない。
丁度1時間で湯ノ沢に着く。強い硫化水素臭で辺りが包まれ、危険な状態を感じて急ぎ足で通り過ぎた。
更に20分ほど登って仙人岱の八甲田清水に着いた。休んでいると兎が小川の浅瀬をものすごい勢いで走り去った。
何かに追われていると直感した私はカメラを準備して兎が飛び出した方向に目を遣っていた。
そして・・・やはり来た。大きな体型なのでおそらくはイタチ。みごとチャンスを逃がすことなく3回も金色のヤツを写真に収めた。
しかし興奮のあまり八甲田清水の写真を取り忘れてしまった。
仙人岱は盛りを過ぎたものの花・花・花。
赤はハクサンチドリ(実はヨツバシオガマと後で知る)。黄色はキンコウカ、白はコバイケイソウや名を知らない小花。それは口では言い表せないほどの花園であった。
再び登り40分で頂上に立つ。雲海上の南八甲田の山並みに目を奪われた。岩木山もきれいに頭を突き出している。標高が低いにもかかわらずロケーションはビッグであった。
帰路は上・下の毛無岱にコースをとるも花はほとんど終わっていて、散りかけたキンコウカだけが咲いていた。
会津駒は8月が盛りだったのにそれより北に位置する八甲田が7月で終わりと言うのは理解しにくいが、標高の違いかもしれない。
途中、スキーを背負って登ってくる多くのスキーヤーに出会った。北斜面にはまだまだスキーができるだけの雪が残っているらしい。
10時前に酸ヶ湯に戻りついた。
下山後は当然温泉。ランプの宿「青荷温泉」と決めていた。国道から林道に入り、一旦登って舗装が切れるところで下り始める。
林道の最高点では岩木山が目前に迫る大きさで眺めることができた。6km走って青荷温泉に到着。
駐車場には30台ほどの車が停まっていて、一軒宿という風情には欠ける。
敷地内も入浴客でごった返し、私の感性とは少し違う。肝心なお湯もアルカリ単純泉でたいした温泉ではない。
やはり夜のランプの情景を楽しむ宿だろう。売店のアンちゃん、ひろさんから年賀状が届いた。
意気投合し話し込んでしまった私を覚えていてくれたようだ。