だれが積んだか五丈岩・・・金峰山
平田影郎
先週の槍登山の後で一週ぐらいはゆっくりしたい部分もあったが、休んでしまうと怠惰な私の性格ではそのままズルズル山から遠ざかりそうで、無理にでも出かけることにした。したがって出発は6時になってしまった。
休日の早朝とはいえ秩父を抜け雁坂トンネルに到着したのは既に8時になっていた。牧丘林道は狭くてカーブが多くスピードを上げることができないが、対向車が無い分走りはスムーズである。道案内に登山者を乗せたタクシーを見つけて後ろにつくが、あっという間にぶっちぎられてしまった。
1時間も走ると前方にひと際高く聳える山が見える。その頂には城塞のような塊が確認でき、五丈岩のある金峰山だと判断できる。しかし見え始めてからも大弛までは暫く走らなければならない。
路肩に駐車された長い車列の脇を通り抜け、信州側にやっと一台分だけスペースを見つけた。既に9時半になっていた。
ハイキング同様で水と行動食だけを持ってすぐに出発、朝日峠への登りを一気に駆け上がった。スタートが遅くすでに多くの登山者が出発した後とあって、先行する人はほとんどいない。どんどんペースを上げることができた。
朝日岳で写真を1枚撮っただけで金峰に着いてしまった。眼下には瑞牆、また八ヶ岳が青空に映えロケーションは満足のいくものであった。
目的の五丈岩に挑戦する。砂糖に群がるアリのように多くの人が張付いている。近寄ると子供たちが集まっていて、確認すると子供たちも登るらしい。
プロテクションが取れないので引率の大人がザイルで確保しながら一人一人ピークに上げている。そのため何人かの登山者が順番を待っていた。
ガキンちょを押しのけて登っても良かったが、他にも良識のある大人の方々が整然と順番を待っているのに、さすがにそれは出来ない。せっかちな性分の私は登頂を諦めた。
誰かの登頂記にもあったが近くにいたおばさんが「ずいぶんきれいに積んであるのね、どうやって積んだのかしら?」と同僚と話していた。
“昔この辺に住んでいた鬼だよ”とでも言えばおばさん納得したかな?
そういう人が結構いるんだなと実感した。
下山も1時間ほどで下ることが出来た。帰路鉄山を過ぎた辺りから雪が舞い始めた。アプローチは簡単でもやっぱり2.600峰、侮ることはできない。
結局往復とも富士をしっかり見ることは出来なかった。その代わり下山後の帰路に西沢渓谷で仰ぎ見た甲武信はダイナミックであった。
いつも通るたびに見ていたはずなのに、苦しかった登頂が思い出されて今日の感動はひとしおであった。
温泉は荒川村に戻ってから秘湯を守る会の“鳩の湯”。泉質は単純硫黄泉で、確かにかすかな硫黄臭があった。
日帰り入浴は1時間で出てくれと言われ、それほどの湯でもないのでそそくさと立ち去った。秘湯を守る会の看板を何か勘違いしているのかな。
料金は高いし迷惑そうだったし、いい印象はない。迷惑なら日帰りをとらなきゃいいのに。