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小屋あればこそ

百名山・南アルプス

前夜、百枚小屋に泊まった方々の内、百名山のご夫婦と女性の単独の方は下山し、もう一組のご夫婦とイエネコさんと大石さん(仮名)と私はいよいよ縦走開始です。

千枚小屋から千枚岳への登りは短いものの急登で、夕べあまり眠れなかった私は既に顎を出していました。汗が吹き出し・・・アンダーウエヤーはしっとりと濡れた状態。あまり濡らしたくないので体温調節のため雨具を脱ぐ事に。その間にご夫婦が抜いて行きます。

ご夫婦は奥さんが健脚で、旦那さんは常に距離を置かれていましたが・・・二人は荒川小屋までほとんど私から離れずに歩いていました。結局、小赤石への登りで急ぎ足の私と離れてからは、再び会う事ができませんでした。無事下山された事でしょう。

稜線に出ると先ほどの汗が嘘のように・・・切れるような風の冷たさが体温を奪っていきます。千枚岳頂上で再び雨具を着込んで歩き始めました。大石さんはここで大休憩のようで、やはりこの後お会いする事はありませんでした。千枚には少し注意の必要な岩場の下りがあります。

丸山から悪沢岳はあっという間で、おそらく15分ぐらいではないかと思います。耐風姿勢を取りながら進むので、とても時間を見たり・・・ましてやそれぞれの山頂で山座同定する余裕などありません。寒くて・・・寒くて・・・とにかく先を急ぎたい。

悪沢山頂にはイエネコさんが見えています。寒いのに我慢して立っているようですが、誰もいなくて写真も写せないのでしょう。私が到着する前には下山を開始し、山頂の直下でお会いしました。アドレスを頂いて・・・お互いの健闘を祈りながら・・・お別れ。
イエネコさんはここから下山しました。

悪沢から中岳の下りでも長い岩場の下りが待っていますから、寒さに気を奪われず再び気を引き締めて挑みます。

しかしこの寒さにどこまで耐えられるのか・・・と言っても今更引き返す事もできず、前に進むしかありません。唯一、そう決心させてくれる強い味方が【山小屋の存在】なんです。
イザと言う時にはそこで待避していられます。このコースは比較的均等に小屋が設置されていて、長いコースの割には安心出来るコースでもあります。

荒川三山の中岳にある避難小屋

荒川前岳付近でもここに待避できます。気になったのは小屋の中に『トイレをするな』という張り紙があったので、冬季の解放時に小屋の中でトイレをする登山者がいるのでしょう。
呆れますね・・・みんなの財産なのに・・・『もう来ないから良いや』とでも考えるのでしょうか。

中岳~前岳と3.000㍍峰を快調に踏破していきますが…寒さは顔の感覚や手の感覚を奪い、そして雨具の中も一旦出た汗で決して快適ではありません。何より心配なのは稜線に出てから水をまったく飲んでいませんでした。その必要が無いほどの寒さ・・・。

この程度の寒さは何度か経験してはいます・・・が、6時間にも及ぶ悪条件は初めての経験でした。もう気力だけが私を支えているんです。

しかし眺望は素晴らしく・・・冷たい風さえなかったら素晴らしい山旅でした。

遮るものが何もない・・・天空の漫歩は深く記憶に残るはずです。
中岳とその向こうに荒々しく【赤石の肩】と【赤石岳】が見えています。

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